99歳の彼女

6/11
前へ
/11ページ
次へ
「宗介、おはよう!昨日は迷惑かけたよな。悪かった。でも、全然覚えてねーんだわ…」 翌朝、いつもの天真に戻っていた。 「二日酔いは大丈夫?」 「おう!大丈夫だよ。あ、おれ、今日出ねーいけねー講義あるから、ちょっと大学いくわ!宗介、とにかくありがとうな!」 そう言って、天真は部屋を出て行った。 父さんから教えてもらったことがある。 酒を飲んで失態を犯したとき、人は『覚えていない』を使う。でも、『覚えていない』という場合、大抵は覚えているそうだ。 その行為が許されることじゃなかった場合、当然『覚えていない』では済まされない。しかし許される場合、それを本人が覚えていないと言うのであれば、こちらもなかったことにする。それが大人のルールだと。 昨日の天真の告白は後者になる。だから、僕は聞かなかったことにする。僕も、もう二十歳だ。大人のルールに従わなければいけない。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加