82人が本棚に入れています
本棚に追加
妻の決意
穏やかな光の差し込むダイニングで、一組の夫婦が朝食を摂っていた。
不意に妻が口を開く。
「ねぇあなた。私、そろそろ天国の門をくぐろうと思うの」
夫は怪訝そうな顔をする。
「せっかく永遠の寿命があるんだから、そんなに生き急がなくたっていいだろう?」
妻は答える。
「やりたいことは全てやったわ。もうこの世に未練はないの」
「僕はまだ君とこうして話をしていたいと思っているけれど、君は違うのかい?」
「結婚して100年も経てば、同じ話の繰り返しだわ。若い世代のためにも古参はさっさと門をくぐるべきよ」
「体をなくして、一滴の雫になってしまうんだよ?」
「体があったって、やることがなくては生きている意味がないと思わない?」
「やりがいなら見つければいいじゃないか」
「やりがいを感じるようなことは、この100年でやり尽くしたわ。私はもう満足したのよ。逆にあなたはこれ以上生きて何がしたいの?」
最初のコメントを投稿しよう!