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付き添い
コードネーム、フィンガー。
名を荒井キヨヒコ。
シルクハットに紺のフロックコートを着ている。首元には蝶ネクタイ。
とある薄暗い一室で一人、フィンガーは読書に勤しんでいた。
クラシックの音楽が流れ、テーブルには、ワイン。
スマートフォンに、通知が入る。
ポロン♪
スマホを確認し、ワインを口に含みながら、
「ふむ。ロジュさんからだな?」
と、
「なるほど、なるほど。ターゲットの男は、強いですか。どうやら、何人もやられているようですね。…それに、」
と、
「警察も絡んでいますか。用心した方がいい。ーと、普通の人は思うでしょう。しかし、問題はありません。ノープロブレムです。」
と、
「ワタクシのような人間は、直接ターゲットを殺すような事は致しません。手を汚さずとも…」
と、言いかけて、フィンガーは指をパチンと鳴らす。
〈指人間の従者達【フィンガー・パーソン】〉
ポワン!
煙と共に、部屋に3人の男と2人の女が出現した。
フィンガーはスマートフォンの画像を見せて言う。
「命令です。親指。人差し指。中指。薬指。小指。この男を見つけて確実に殺しなさい。」
3人の男と2人の女は、それぞれ指の名前で呼ばれていて、命令された指達は、無言でコクリと頷いた。
「………。」
* * * * *
街中で、ノラと玉野が歩いている。
ノラが襲われた事により、また最低ノラに1人見張りが着くようになった。
2人は無言で歩いている。
「あの、」
ノラが玉野に話しかける。
「何?」
ちょっと遠慮しがちに、玉野は言った。
「お腹空きません?なんか、食べませんか?」
と、ノラ。
「別に、いいけど…。」
と、玉野。同世代くらいだとはいえ、男だと緊張するな…。桑田隊長ぐらい歳離れてたら緊張しないんだけどな…。
玉野は、ノラに話かける。
「あのさ、歳いくつ?」
「俺ですか?実は、それも記憶なくて、、よく分かってないんです。」
と、ノラ。
「へ〜〜。事故にあったって言ってたよね。」
と玉野。
「そうですね。」
と、ノラ。
「いつ頃?」
と、玉野。
「2、3ヶ月くらい前ですかね?」
と、ノラ。
「へ〜〜。」
と、玉野。
「…あ、何食います?」
と、ノラ。
「私は、なんでもいいけど。伝票貰えば、多分、サクトムで経費落ちるし。ちょっと、高くても大丈夫なんじゃない?」
と、玉野。
「あ、じゃあ、ラーメン行きます?」
と、ノラ。
「え〜〜。ラーメンか…。折角だから、もうちょっと、なんか違うもの食べようよ。」
と玉野が言う。
「ラーメン嫌なのか…。なんでもいいんじゃないのか…。」
ちょっと、ガッカリしてノラは言う。
「なんでもって言ったけど、ラーメンは今の気分とちょっと違うかな〜〜って。」
と玉野が言う。
「じゃあ、何食いたいんですか?」
と、ノラが言う。
「うーん。」
少し考えて、玉野は、
「オムライス。かな〜〜。」
「分かりました。オムライスでいいですよ。」
と、ノラは言った。
オムライス『で』いいって、『で』いらなくない?と玉野は思い、顔をしかめた。
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