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後始末
ウ〜。ウ〜。
警察のパトカーのサイレンが鳴り響く。
トカゲのような姿の怪物の成れの果て。
死体は無残にも、水族館の外の広場で転がる。
それは、人間だった姿のものだ。
複数人の警察官が取り囲み、奇妙な目で見ている。
「なんですか?コレ!?」
警察官の男の一人が言う。
土手っ腹に、風穴が空いた怪物が横たわっている。
警察官は、凝視し、
「気持ちが悪い…。」
そう呟く。
その場のリーダーらしき、警察官は、顔をしかめて、
「検死にまわしておけ。…。」
そう言う。
警察官の少し離れた周りでは、ちょっとした、ギャラリーができていて、スマホ片手に写真を撮ったり、動画をまわしたりしている。
怪物の死体は、SNSに投稿され、たちまち拡散された。
反応はそれぞれだが、素直に気持ち悪いと思う者、怪物の正体を突き詰めたいと思うもの、悪戯だと疑う者、それぞれいろんな人がいる。
数日間、ちょっとした話題の一面になった。
警察の圧力がかかったのかは分からないが、メディアには、一切取り扱われず、さまざまな憶測が飛び交うだけのネット内だけの都市伝説となった。
この『モンスター騒動』は、海外の人も、興味を持つ人も多く、ブログや、記事に書く人も多い。
だが、多くの人は、フェイクニュースだと思う人が大半で信じる事をやめた。
警察側の方も、死体解剖をおこなったが、未知の生物だという事しか、分からず仕舞いで真相は、闇に消えた。
* * * * *
ロジュは、戻ってきた鴉から情報を読み取り、危機を察した。
それは、ターゲットの男の方ではなく、ターゲットについている味方の異能力者の二人組についてである。
岩の能力者の男と、狼に変身する能力者の女、この2人の男女の所在を辿ると、警察がチラついて見えてきたからである。
国家権力が絡むと非常に殺しの仕事を任せるのは、やりずらい。
「これは、ボスに相談しなくては、ならないな………。」
ロジュ的には、このミッション自体、謎であり、鴉で観たが、大した男ではない様に見えた。何故、これほど、このターゲットに手を焼いているのか?しかし、多くの欠番が出ている。やはり、他の能力者が関わっているのだろう。
ミッションの詳細は、詳しくは、知らないが、割りに合わないミッションではないか?と考えた。それも含めての相談である。
ロジュは、鴉をボスに向けて飛ばした。
* * * * *
それから、2週間が経ち
4月15日の土曜日。
天気は曇りのち雨。
しくしくと雨が降っている。
ピンポーン。
呼び鈴を鳴らす。
玉野ヒマリは、桑田隊長に呼んできてと言われた山崎イナのアパートに訪れていた。
ガチャ…。
「……どなたですか?………。」
顔を扉から出したのは、黒髪の髪の長い女の子。目の下には、クマができている。
「あ、イナちゃん。…玉野だけど、分かる?」
と、玉野が言う。
「分かりますよ…。ヒマリちゃんですよね。……。」
イナが言う。
「桑田隊長に、呼ばれて来たんだけど、…。イナちゃん、どんな感じ?…。」
しどろもどろに言う玉野。
「どんな感じとは?…。見て分かりませんか?…。人生に絶望していたところです…。」
イナが言う。
なんとも言えない負のオーラに玉野は狼狽える。
「もし、イナちゃんが来れそうなら、本部に来てほしいな〜〜…って。」
玉野が言う。
「それは、難しいお誘いです。私なんかが、皆さんのお役に立てるとは、思いませんが。」
イナが言う。
「そこをなんとか!お願い!」
玉野が言う。
「………。分かりました。今日は、体調がすぐれないので、また後日、本部に顔を出すようにします………。それでは。」
イナが言った。
扉がギィ〜。バタンと静かに閉まった。
* * * * *
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