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槙野 優馬、21歳。
顔はイケメンという部類らしい。
勉強、スポーツそこそこ。
モテないわけじゃなかったが、付き合っても、長続きしない。
とにかく、話すのが下手で、みんな「優馬くんて良い人なんだけど……」と言って別れていく。
しかし、話すのが苦手、そんな理由で、自分から告白なんてしたことなかったから男子の友達からは「優馬はモテるから羨ましい」と言われていた。
本人は多少悩みだと思っているのに。
そんな時に、佐野 涼という同じ大学の女生徒に告白を受けた。
知らないかおではなかった。肌の色が白くて、ポニーテールをした黒髪が綺麗な、美人だと思っていた。
俺は告白されて、初めて嬉しいという感覚になったかもしれないと、自分で思う。
ドキドキしながらOKをだすと、彼女はにっこりと笑って「ありがとう」と言った。
***
人と話すということをもっと勉強しなければならないと思い、たわいもない質問や服や天気、ことばの引き出しを増やそうと俺なりに頑張っていた2ヶ月。
涼とは別れたくないと思って必死だったその頃に、涼から「私さぁ、優馬くんなら話してもいいな、って思うことがあるんだけど、いざ言おうとしたら勇気ないんだよね……」と言われた。
「なに?」
「いや、まあ、本当にこの話を告白したいんだけどさ、んー」
「え、気になるよ」
「だよね」
涼は苦笑いで、話そうか話さまいか、目がキョロキョロと動いている。
「もしかして……え……なんか犯罪絡みとか」
「ううん、そんなんじゃないよ」
「実は、もう1人彼氏がいる、とか……」
言いながら語尾が小さくなる。
「違う!違う!でも、言ったら嫌われちゃうかもと思うと話せなくて」
「大丈夫だよ、受け止めるからさ」
「うん、でも、まだ話せないみたいだ。ごめん,こんな言い方したら気になるよね。でも、嫌われたりするのも怖いから」
「その気持ちは分かるけど、嫌ったりしないよ」
俺はすごく気になったが、あまりしつこく聞いて嫌われるのも怖かった。
「とにかく、犯罪とか、浮気とかそんなんじゃないから。
気持ちに整理がついたら話したいけど、この話、墓まで持っていくつもりでいたからなかなか勇気でないんだ。優馬くんに嫌われたくないし」
「嫌わないよ、俺、涼のこと好きだし。簡単に嫌いになんかならないから、教えてよ」
「だよね、こんな風に話してて気になるよね、ごめん。でも、やっぱり嫌われるの怖い!」
俺は黙った。
気になるのは気になる。
でも、彼女は今のところ、その「告白」とやらを言う気はないのも見て取れたので、追求するのをやめた。
それから更に2ヶ月。普通に付き合ってきて、今回はもっともっと長続きさせるぞ!と思っていた矢先、涼にフラれた。
「優馬くんて、良い人なんだけど、どうしても話が盛り上がらないと言うか、私と笑うツボが違うと言うか……友達に戻ってくれないかな?」
こんな風に言われたら、もう身も蓋もない。
頑張るからと少しは粘ったが、答えはNOだった。
「じゃあ、前に話してたさ、例の秘密の告白、教えてよ」
「えっ!?無理だよ。友達に戻るのにそんな余計に教えらんない!いやいや、無理無理!じゃ、またね、今度会っても普通に声かけて」
「えええ…」と言うまもなく喫茶店を出ていってしまった。
結局、一体何の事だったのか、今も分からない。
彼女は誰かにその秘密の告白をするということは今後あるのだろうか……?
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