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「はぁ……」
僕が席に戻ってため息をつくと、縹がくるっと振り返り、言った。
「好きです」
「!」
「って言われたんだろ? 七つ子から」
縹は身体をひねり、赤面した僕の机に肘を付いた。
「あ、うん……。縹、よく知ってるね」
「あいつら去年は俺に告ってきたんだ」
「あ、そう……なんだ」
何だ。それじゃ、七つ子の誰かと付き合っていてもおかしくない。僕への告りは揶揄うためだったのかもしれない。考えた僕は、どうやって傷つけないようにお断りの返事をしようか悩んだ。
理由としては、七つ子の見分けが、まず僕には付かない。
喋ったことすらたぶん初めての相手に、告られたからという理由で付き合うのはどうかと思う。だから断る。よし、この線でいこう。僕が心に決めると、縹が声を潜めた。
「でも全員振ったら、七人全員にめちゃくちゃ泣かれて、ファミレスで朝まで修羅場コース」
「え」
「しかも何かの事件と間違われて警察まで呼ばれて大変だった」
「えぇ……」
去年の冬に、縹が警察沙汰の事件を起こして退学寸前までいったと畏れられていた噂の正体がこれか。尾ひれが付きまくって非常に面倒くさいことになっている。僕は他人事ながら、縹に少し同情した。
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