降板

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「馬鹿げてるでしょう?くだらなくて退屈で。醜悪で下品。」 「な!」 「遠くの島からやってきた女の子と人気者の従兄弟?そしてクラスの陽キャの絵里奈ちゃんが主人公?勝手に私にあてた役割は、可哀想なふりをする陰気なライバルってとこ?」 「なにいってんの?…頭おかしいんじゃない?」 「どっちが?」  睨み合う私と二人。  そこへ、三村兄弟と五十嵐兄妹が駆け込んできた。 「大丈夫か?」  同じセリフは三村兄弟たちのは奏音ちゃんへ、五十嵐兄妹は私に向けられていた。  ヒロイン気取りの奏音ちゃんは途端に態度を豹変させ、 「龍ちゃん、恭ちゃん、私……、莉乃さんの力になりたくて……。莉乃さんは二人の大事な幼馴染だし。莉乃さんは変質者に襲われて傷ついているだろうから私たち友達として助けてあげたくて。でも、莉乃さんはそんな私達のこと拒絶して……酷いことを絵里奈ちゃんにも言って…。私は我慢できる。莉乃さんのつらい気持ちもわかるから。でも転校してきてから莉乃さんに酷いこといっぱい言われたりされたりして落ち込んでいた私を助けてくれたのは絵里奈ちゃんだし……。そんな絵里奈ちゃんにまであんな暴言を吐く莉乃さんのこと、これ以上庇えない。」  全く覚えのない事をいう奏音ちゃんに寒気がする。  龍平君と恭平君はどう思ってるんだろう?と彼らを見つめた。  そして彼らの目の中に私への蔑みと憎悪の色を見たとき、がっかりとかショックはもはやなく。  もう随分前から彼等に期待をしなくなっていた自分に気づく。 「莉乃、つらい気持ちは分かるけど、奏音に当たるのは違うんじゃないか?」 「奏音はお前に虐められてもお前が可哀想だからって我慢していたんだぞ。」  肩が震える。泣いてるのか?って違う。余りに馬鹿馬鹿しくて笑えてくるんだ。 「莉乃、僕が渡した『お守り』、ちゃんと使ってる?」  ギスギスした会話の中、蓮君の静かな声が私の耳を喜ばせる。 「うん。ちゃんと守ってくれてるよ。二人が私に言ったこと、ちゃんと全部録音してる。」  ポケットからICレコーダーを取り出す。  保健室登校をするから凛ちゃんや蓮君は教室に戻って、とお願いしたときに、蓮君から交換条件として渡されたものだ。  一人になるときには必ず手元において、いざというときはボタンを押すように、と。    え?と奏音ちゃんと絵里奈ちゃんはポカンとしてそれから自分たちの言った言葉を思い返したのか青くなる。 「どんな風に四条さんたちが『力になりたい』言葉をかけたのか、はっきりわかるな。」  蓮君が凍りそうな冷たい目で奏音ちゃんたちを見る。 「ひ、卑怯よ!こそこそと録音するなんて!」 「仮病使って莉乃に近づいて嘘ばっかり言うあんたたちに言われたくないわよ!」  凛ちゃんは怒りで綺麗な顔を赤らめて怒鳴る。
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