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「あいつ、母親の具合があんまり良くなくて不安定なんだよな。だから母さんも余計過保護でさ。許してやってくれよな。」
「恭平君、私、怒ってなんかいないし、気を悪くしてもいないよ。」
「……うん。そうだろうけど……。あいつ、莉乃と凛にいまいち受け入れられてないんじゃないかって怯えてるんだよ。」
「そんな…。私と凛ちゃんは昔からの友達だから…。」
「わかってる。でも疎外感があるんだと思う。莉乃だって自分にわからない俺たちと奏音の親戚の話されたら面白くないんだろ?」
「え?なんのこと?」
「あ、いや、奏音が俺らに、莉乃が、気を悪くするから莉乃がいるときは莉乃の知らない話題はしないようにしよう、って言ってて。」
「私はそんなこと気にしたことないよ?」
愕然とした。
「奏音は多分自分がそうされて嫌だから俺たちにはそうしないように言ったんだと思う。あ、もちろん、莉乃や凛が意識して奏音を排除してるとは思わないよ?」
「意識してもしてなくても、私も凛ちゃんもそんなことしてない!私たちがそんなことしないって分からないの?私たち何年もずっと恭平君の友達だよね?」
自分のことはともかく凛ちゃんにあらぬ疑いをかけられたようで腹がたった。
「……でも、奏音がつらい思いをしてるのも事実なわけで…。奏音だって生まれたときから従兄妹で……。」
恭平君がモゴモゴ歯切れの悪い言い方をしていると、
「だから?四条さんの被害妄想にまで凛や莉乃が責任持って対応しろっていうわけ?」
交差点に立っていた蓮君が冷たい声で言った。凛ちゃんも横に立っていて厳しい目で恭平君を見詰めていた。
「いや、俺はそんなつもりでいったわけじゃなく……。ていうか、被害妄想って……そんな言い方……」
「ふーん、じゃあ、なんだろ?稚拙な策略?悪意ある謀略?」
冷え切った視線と感情のわからない口調で蓮君は恭平君を追い詰める。
「……先に行く。蓮、莉乃頼んだ。」
「言われなくても。」
「……お前、なんか変わったな。」
一言蓮君に言い捨てるように恭平君は私たちに背を向けて、奏音ちゃんと龍平君を追いかけていった。
「どっちが……」蓮君の言葉は恭平君の耳には届かなかっただろうな。
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