振られた役割

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 たぶん、私たちのバランスが崩れているんだろう、とこの頃から思っていた。  でも幼馴染と言っても、大きくなればそれぞれの志向や目指す道が違ってくるのは当然で。  小学校の高学年になれば男女にそれぞれ違いは出てくる。  気づいたら龍平君も恭平君も野球に夢中で、身体も大きくなったし、声変わりだってしていた。  中性的な綺麗な男の子だった蓮君だって背が高くなってきて、中高生のお姉さんたちにも街なかで声を掛けられることがあるらしい。  もともと美人の凛ちゃんは益々綺麗になって。一緒にお出かけに行ったらスカウトされることも多い。隣りにいる私にもついでに名刺を渡されることもある。きっと、あれだよね。「友達に誘われてオーディション受けに行ったら、友達じゃなく私が受かってー」みたいなエピソードの、「誘った友達」に私をしたいんだろうな。スカウトの人は。  誘わないけど。  まあ、そんなふうに人は変わっていく。  きっと、姿形だけじゃなく、中身、心も。  だからみんないつの間にか優先順位や大切なものが変わっていくのも仕方のないことなんだ、と。  パパとママだって、お互いが一番大切だったから結婚して、私が生まれて。  でも、いつの間にかそれはいちばん大切なものじゃなくなったのかもしれない。    だから二人は別の道を歩いて。  私は一之瀬莉乃から二階堂莉乃に変わったんだ。  大人だって変わる。ましてや成長し続ける私たちはもっと変わってしまうのかもしれない。  授業中、ぼんやりと考えていたら、凛ちゃんに 「こら!何ぼんやりしてるの?次、体育だよ。着替えに行こう」と叱られてしまった。  更衣室に行くのに奏音ちゃんも誘おうと思って奏音ちゃんの方を見ると、クラスの別の女子グループと仲良く話していて、もう教室を出るところだった。 「へー、あの子、女の友達出来たんだ。」と凛ちゃんは言う。 「そうみたいだね。」 「……あの三人組ってさ、龍平と恭平のファンの子たちだよね?」 「そうなの?」 「うん、ファンクラブとか言って騒いでるよ」 「全然知らなかった。龍平君も恭平君も蓮君もモテるねー。」 「爆発しろ!」  凛ちゃんはニヤッと笑った。 「でも、良かったんじゃない?龍平君や恭平君の繋がりで奏音ちゃんにも友達ができて。」 「……そうだね。」 「さ、私たちも更衣室行こう!今日の体育、何だっけ?」 「体育館でバスケ。」  話しながら凛ちゃんと二人で教室を出ようとしたら、蓮君が凛ちゃんに声を掛けた。 「凛、気をつけてな」  なにを?と思ったけど、双子の凛ちゃんには通じたらしく。 「うん、大丈夫。」 と返事をしていた。
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