振られた役割

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 この日は班別の話し合いが終わった班から下校と言われていた。  龍平君がリーダーの班は、調整役だった蓮君が抜けたので恭平君が穴埋めで動いていた。女の子たちはおしゃべりが忙しいらしく、なかなか話し合いが進んでいないように見えた。  私達は蓮君がリーダーを引き受けてくれて凛ちゃんがサブリーダー。私は保健係。雪子ちゃんは美化係になった。  自主研修の行程は地理と時刻表を見るのが好き、という八鍬君がモデルプランを作ると言ってくれた。写真が趣味の九重君は記録を取ってくれると立候補してくれた。  次回までにやることを決め、だいぶ早く終わった私達は先に下校することにした。  帰る前に、龍平君に蓮君が声を掛け、なにか話をしていた。ちょっと回り道をして、私のことを家まで送ってくれた凛ちゃんと蓮君だったが、別れ際に蓮君が私に言った。 「明日から僕と凛も莉乃たちと登校するね。朝にこっちまで来るから。」 「え?わざわざ回り道になっちゃうよ?」 「道を一本変えるだけだからたいしたことないよ。今朝みたいなことある方が心配だから。」  奏音ちゃんが私が怒っていると勘違いして、泣き出してしまったことを言っているらしい。それは今朝だけでなく、何度かあることだった。 「私もできるだけ早く莉乃に会いたいもん!明日から一緒に行こうね!」  どうやら今日の帰り際に龍平君には蓮君が話したらしい。  正直に言うと、手間をかけて悪いとは思うけど、凛ちゃんや蓮君がいてくれれば奏音ちゃんに思い違いをされなくて済むかもしれない。だとすればホッとしてしまう。 「ありがとう、蓮君、凛ちゃん。」 「うん。今日は僕も凛も、これから塾があるから帰るね。ちゃんと戸締まりしてね。」  ママは在宅ワークが中心だけど、今日はお仕事に出ていた。 「うん。じゃあ、また明日!バイバイ!」 「ほら、莉乃、鍵閉めるところ見てから帰るから家に入って」  過保護な蓮君に言われて私は家に入った。  一人の家はしんとしていたけど、凛ちゃんや蓮君に守ってもらってるみたいでその日はポカポカした気持ちになった。  そして、気づいた。朝の登校がここしばらく憂鬱だったな、ってことに。  私は多分嫌な子だ。  奏音ちゃんはそんな私の負の感情を感じていたのかもしれない。  修学旅行の班が奏音ちゃんと別になったことを何処かでホッとしている私は性格が歪んでいるんだろうと思うけど、自己嫌悪よりも安堵感の方が大きかった。  色んな思いを振り払うように、私は自分の部屋に行って宿題をした。    
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