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「では、失礼します。莉乃、行こう」
そう言って蓮君は私を家から連れ出した。
私の家の前では凛ちゃんとママがまだ話をしていた。
「あら、莉乃、龍平君たちは?」
蓮君と二人で帰ってきた私をママが不思議そうに見る。ママの顔を見たらなんだか涙が出そうになってしまう。蓮君が私をママから隠すようにして、
「なんか、昨日学校の課題が終わらなかったみたいで先に行ったそうです。朝早く決めたからおばさんに言付けていったんですって。」
「そう。じゃあ、あなた達も車に気をつけてね、いってらっしゃい。」
ママはニコニコしながら手を振ってくれた。
ママの姿が見えなくなってから凛ちゃんが私と蓮君に
「大丈夫?」と聞いてきた。
「……ん。莉乃、心配ないから。僕も凛も離れない。」
「……蓮君……。」
「あいつら、なんなのよ。気に入らないなら関わるなっつーの。」
「莉乃や凛の存在を落とすことでしか自分の承認欲求を満たせないんだろうな。アホくさい。」
「それとね、蓮のこと、自分の周りに侍らせたいんでしょ?きっと。」
「ありえない」
「必死だよね、蓮と莉乃を離したくて仕方ないの。最初は私に近づいて莉乃を遠ざけようとしてたからね。で、それができないから次は蓮に取り入ろうとした。」
「馬鹿馬鹿しい。もし万が一凛があいつの言いなりになったとしたって俺はそんなことにはならない。」
「ちょっと!万が一なんてないからね?私の方が莉乃と仲良くなったのは蓮より先なんだからね!」
「ほぼ、一日違いだろう。むしろ俺の方が莉乃のこと解ってる。」
「ちがーいーまーすー。女の友情は固いんですー。」
「そんなことないよな?莉乃。僕のことも大事な友達だと思ってるよな?」
二人がフザケて言い争いをするのは落ち込む私を慰めるため。嬉しくて切なくて泣き笑いのような顔になるのがわかる。そんな酷い顔をしているのに凛ちゃんも、蓮君も気づかないふりをする。
「だいたいさ!蓮は裏表ありすぎー!大人の前ではいい子ぶってるし、莉乃以外の女の子には冷たいし!」
「そうかな?」
「そうだよ!大体同年代の女の子で莉乃にだけだよねー、一人称『僕』っていうの。」
それは私も気付いてた。多分私に男らしさとかをなるべく見せないようにしているんだろうな。過保護な蓮君は私に常に気を遣っている。
「無意識なんだけどなぁ。」
「嘘くさ〜い。どうせ莉乃にいい人に見られたいだけでしょ?この腹黒男め!そのうち莉乃以外の女の子に爪弾きにされるんだからね!」
「凛ちゃんったら、言い過ぎ!」
「まあ、そうなっても一向に構わないけど。」
「は?」
「莉乃に嫌われないなら別にいいよ〜」
「もう!ふざけ過ぎだよ!蓮君!」
嫌な雰囲気はいつの間にか消えていた。
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