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その日から徐々に、でも確実に。
龍平君、恭平君とは関わりが薄くなっていった。
奏音ちゃんと絵里奈ちゃんのグループはチラチラと私の方を見ながら悪口を言っているのはわかったけど、気にしないようにしていた。
それを諫めることもなく、ただ罪悪感めいた感情から私や凛ちゃん、蓮君から目をそらす二人にどこか醒めた気持でいた。
きっと奏音ちゃんの存在はきっかけに過ぎない。奏音ちゃんが現れたことで崩れてしまうバランスならば、それは時期がたまたま今だっただけで、いつかは崩れてしまう運命だったんだろうって私は受け止めていた。
ママと三村のおばさんもしょっちゅうお茶飲みをしてたけど、道であったら挨拶する程度のお隣さんになった。
ママは何にも聞かなかった。わざわざ仲裁に入ろうともしなかったし、私を問い詰めることもしなかった。それがありがたかった。
ただ、ある日二人でお茶を飲んでいたときに、
「なにかママに助けてもらいたいことが出来たときは遠慮しないでね。それってママにとっては嬉しいことだから。」
とだけ、言った。そして
「もし、ママにも話せないようなことで、でもやっぱり大人の手を借りたいときはママに遠慮せずパパに連絡してもいいからね。」と、言った。
「パパになんて話すことないよ?もう何年も会ってないし。パパの新しい奥さんだって嫌なんじゃない?」
「あー、うん、ママとパパが離婚した頃はその人がパパと莉乃が会うことあんまりよく思わなかったから面会とかも決めたりしなかったんだけど。……、あのさ、パパ、今独身なの。」
「え?また離婚しちゃったの?バツ2?」
「うん、いや、正確にはね、籍入れてなかったらしいのよ、パパ。」
「うそ……。」
「まあ、色々あるのよ、大人の方にも。あんたたち子供の方に色々あるようにね。」
「ふぅん。…ママ、まさか……元サヤ……とかないよね?」
ブーッとママは飲んでたお茶を吹き出した。
「やだ!ママ、汚い!」
「ご、ごほ、……ちょっと!莉乃アンタ、なんてこと言うのよ!あるわけないじゃん!そんなの!あのね、信頼って一度壊れたらもう一度築くって一度目の何倍も、何十倍も、何百倍も大変なのよ?ママは今莉乃と二人ですごく幸せで満足してて。今更そんな努力をするなんて無理!できない!したくない!する気もない!第一、努力をするのはママじゃないもの!するとしたらパパ。しかもママはきっとその努力を認めることも受け入れることも無理よ。たとえ度量の小さい女だって言われても無理なものは無理!」
「わ、わかった。わかったから。」
ママの剣幕にすっかり気圧された。でもなんとなく、胸の中のモヤモヤがストンと落ち着いた。
龍平君や恭平君との間の信頼も一瞬で崩れてしまった。
とても悲しいし、悔しいけど。でも、そうだね。その信頼をもう一度築くのは難しい。そして、もし、それをするとしたらそれは二人がしなくちゃいけないんだ。そして、たぶん二人はそうしない。
そしてもう一つ。
私と今も信頼関係にある凛ちゃんや蓮君を裏切るようなことは私は絶対にしない。いや、二人に限らず、どんな人に対しても誠実な人間でありたい、と私は思ったんだ。
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