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降板
「そろそろ、悲劇の主人公気取るの、やめたら?」
絵里奈ちゃんがうんざりした口調で言う。
「どういう意味?」
「あの犯人が死んだんだから、もう莉乃さんが狙われたりすることもないでしょ?それなのに傷ついたふりしていまだに蓮君たちの同情引こうとしてるってこと。」
「龍ちゃんや恭ちゃんだって、いつも遊んでた莉乃さんがたまたま私の島に来ているときに襲われたからずっーっと気にしてた。アンタはそれにつけ込んで長いこと龍ちゃんや恭ちゃんを束縛してたのよ。私が側にいてあげるようにならなかったら、アンタに縛られたままだったでしょうね?」
「……。そんな風に奏音ちゃんは思ってたんだ。だから私に最初からつっかかってきたのね?」
「……それだけじゃないけどね。最初からアンタのこと嫌いだった。島にいて年に数日しか会えない私と違ってアンタはたまたま隣の家にいたってだけで二人やその友達に囲まれてた。あたしだって最初から側にいたら……その役は私だったのに!」
「役?」
「アンタがみんなの同情引こうとするから!龍ちゃんや恭ちゃんは夏休みに島に来るのも躊躇するようになったし!来てもいっつもアンタのことばっかり話すし!見たこともないアンタのこと大っ嫌いだったわ!」
「案外、自分から変質者に近寄っていったんじゃないの?今度監禁されてたって女の子も実は家出少女だったんじゃないか、ってネットに書かれてるし。」
ニヤニヤと絵里奈ちゃんは言う。
「ねぇ、ほんとに未遂だったの?あいつの家に付いていったんじゃないの?」
「大変だよねー、すごい美人の親友がいるから、それより注目されるとしたら可哀想な役くらいしか男の子の気を引けないんだもんね。」
「ブスのくせに調子のんないでよね。所詮、五十嵐凛だってアンタのことただの引き立て役くらいしか思ってないってきづきなさいよ」
ひどい言葉を掛けられても頭は冷静だった。ポケットの中には蓮君にもらったお守りがある。大丈夫。私は大丈夫。
すぅっ、と意識して息を吸った。
「さっきから二人が言ってる役ってなんのこと?私はいつあなた達の馬鹿げた舞台に引っ張り出されて役を与えられたの?」
「馬鹿げた舞台?」
私が言い返すと思わなかったのか、奏音ちゃんたちは苛ついたように声を大きくした。
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