降板

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「奏音ちゃんたちにとっては、私は、二階堂莉乃は美人でも可愛くもなくて。それでも素敵な幼馴染たちを引き留めるために悲劇の主人公ぶって縋っているサイテーな女の子って位置づけなんだよね?」  私は今まで言われたことを淡々と口にする。 「で、そんな醜い心を持つ悪役を二人のヒロインがやっつけて、ヒーローたちの心を開放してあげてめでたし、めでたし、っていう筋書きなんでしょ?二階堂莉乃はヒーロー達からは蔑まれ、罰が当たって学校から姿を消す?もしかして引越とかしちゃったりして?」 でもさ。 「それってさ、あなたたちが勝手に私に押し付けた役割だよね?」  沈黙にも色んな意味がある。  怒りで憮然とした沈黙。  唖然としてしまったゆえの沈黙。  言い訳の思いつかない沈黙。  それぞれの沈黙を前に私は静かに告げる。 「私はそのゲームに乗ったつもりはないし、ましてやロールプレイングをやるつもりもないよ。あなたたちがやりたいなら勝手にすればいい。もし、あなたたちの舞台で私に役割を振っていたとするならば」 「私はその舞台を降板する。っていうか」 「勝手に人をそんな馬鹿げた舞台にあげないで。今も、これからも」  職員室から養護教諭の先生が戻ってきたので、私は荷物をまとめて帰宅することにした。
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