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「え?パパに蓮君、会わせたの?」
家に帰ったらママに驚かれた。
パパとあって話した内容には驚かなかったくせに、蓮君が迎えに来てくれたことに反応するママ。
「会ってはいないよ?パパはマンションの下まで送るって言ったけど、玄関でバイバイしたもん。」
「あらら……。6年ぶりに会う娘に彼氏が出来てたらショックだったでしょうねぇ、パパ。」
「な……!か、彼氏って!蓮君は彼氏なんかじゃないよ!友達で親友のお兄さん!」
顔が尋常じゃないくらい赤くなるのが自分でわかる。
「はいはい、そういうことにしときましょう。」
「そういうことだもん!」
「ママはさ、蓮君いいと思うよー。カッコいいし、優しいし、頭がいいし、最高じゃない?」
「そんなの……。わかってるけど……。私だってカッコイイと思ってるもん。」
「ふふ。そうなんだ~。」
ママはニヤニヤして私を見るから
「勉強してくる!パパが何にも心配しないで頑張れって言ってたし!これで落ちたら恥ずかしすぎる!」
「そうね〜。蓮君とバラバラになったら寂しいもんね〜。中学行ったらますますモテモテよ、蓮君。」
「………ママの意地悪」
「ゴメンゴメン。あ、そういえば話は変わるけど、お隣の奏音ちゃん?お母さんが退院出来ることになったらしいわよ。」
「え?そうなの?」
「うん。もうすぐ退院して島に帰るって。奏音ちゃんはこっちで卒業式するのか、帰るのかわからないけどね。」
「ふーん。」
あんなに悩まされた奏音ちゃんのことだったのに、もしかして離島に帰るかも、と聞いても嬉しくも悲しくもなんともなかった。
同じように龍平君や恭平君に対してももうなんの感情もないと気付く。
ずーっと遠くの世界の人の話を聞いているみたいだった。
そして、後日、奏音ちゃんがどうしても島には帰らず、このままこっちに残って中学もこっちに通う、と言い張り。
離島には高校もないからどうせならこちらの中学に通ってしまったほうがいいかも、と家族会議で決まったと奏音ちゃんが勝ち誇ったような顔で絵里奈ちゃんと大きな声で話しているのを聞いたときも私は普通に参考書を読むことをやめなかった。もう、奏音ちゃんも三村兄弟も私の世界からは遠い人になっていた。
私は奏音ちゃんの舞台から完全に去っていた。
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