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実際、駅から10分ほど歩くんだけど、それを伝えたらミコは『家まで送る』とか言い出しそうな気がする。
……うん、誤魔化そう。
「遠いみたいだし、家まで送らせてね」
「NO!」
断る前に決められてしまい、慌てて止めようとするも……。
「ねぇ、駄目?」
「駄目じゃないです!」
首を傾げて頼まれたら撃沈です。
むしろ私が送っていってあげたいくらいなのに――うん、家に着いたらタクシー代渡そう。
そんなやり取りをしていたらいつの間にか駅に着いていた。
改札を通り、最寄り駅に向かうホームへと向かうとちょうど電車がやってくる。
車内は混んでいたが満員というほどでもなかった。
「あの、ミコ……さんっ」
呼び捨てていいのか、そもそもミコ呼びしていいのかわからないけど声を掛ける。
「ミコでいいよ?」
「あ、はい」
いや、確かに私のほうが歳上だけど。
「じゃなくて! ミコの家はどっち方面なんです?」
推しに送って貰うのはいい――というか諦めたけど、遠回りになるなら交通費くらい出させてほしい。
わたしの意図がバレているのか、ミコは笑うだけで答えてくれなかった。
「笑顔で誤魔化されるとでも……」
うう、眩しすぎるんですけど。でも負けない!
と、意気込んだものの、個人情報もあるので迂闊につっこめないけれど、意を決して口を開く。
「もしかして、逆方向?」
無言の笑顔は肯定だと思った。
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