その恋は突然に

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 困っているのに腕を掴まれた。  だからわたしは男の人が苦手なんだ。 「あの、本当にやめて……」  拒絶の言葉も届かず、男は舐めるようにわたしを見てくる。 「ねえ、彼女、嫌がってるけど?」  掴まれた腕が痛くなり、涙が零れそうになったとき、誰かが通り掛かり声を掛けてくれた。  パッと手が離されると、声の主が間に入ってきた。 「ミコ!?」  眼の前には推しの姿。  状況が把握できないわたしは黙ってミコの背中に隠れた。 「ファン同士仲良くするのは良いけど、嫌がってるのに迫るのは駄目だよね」  わたしからはミコの表情が見えない。  けれど、声は怒っているように感じる。  ミコの気迫に男は黙って逃げていった。 「ねえ、大丈夫だった?」  ミコが振り返り声をかけてきた。 「は、はい。ありがとうございました」  推しを直視できずに俯くと、心配そうな視線が落とされる。  緊張のあまり、黙っていると顔を覗き込まれた。 「顔色が悪いね。ちょっと来て」  ミコに促され、あとをついていくと、控え室のような部屋に着く。  部屋の中にはJewelry Boxのメンバーが揃っていた。 「おかえり、ミコ。そのお姉さん、どうしたの?」  最初に声をかけてきたのは赤=ルビー担当のメア。  本名は赤井(あかい)愛空(めあ)で、サファイア担当のミコとはイトコ同士らしい。 「助けた」
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