35人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
困っているのに腕を掴まれた。
だからわたしは男の人が苦手なんだ。
「あの、本当にやめて……」
拒絶の言葉も届かず、男は舐めるようにわたしを見てくる。
「ねえ、彼女、嫌がってるけど?」
掴まれた腕が痛くなり、涙が零れそうになったとき、誰かが通り掛かり声を掛けてくれた。
パッと手が離されると、声の主が間に入ってきた。
「ミコ!?」
眼の前には推しの姿。
状況が把握できないわたしは黙ってミコの背中に隠れた。
「ファン同士仲良くするのは良いけど、嫌がってるのに迫るのは駄目だよね」
わたしからはミコの表情が見えない。
けれど、声は怒っているように感じる。
ミコの気迫に男は黙って逃げていった。
「ねえ、大丈夫だった?」
ミコが振り返り声をかけてきた。
「は、はい。ありがとうございました」
推しを直視できずに俯くと、心配そうな視線が落とされる。
緊張のあまり、黙っていると顔を覗き込まれた。
「顔色が悪いね。ちょっと来て」
ミコに促され、あとをついていくと、控え室のような部屋に着く。
部屋の中にはJewelry Boxのメンバーが揃っていた。
「おかえり、ミコ。そのお姉さん、どうしたの?」
最初に声をかけてきたのは赤=ルビー担当のメア。
本名は赤井愛空で、サファイア担当のミコとはイトコ同士らしい。
「助けた」
最初のコメントを投稿しよう!