その恋は突然に

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 好きなものを好きと言っただけなのに。  オタクなファンに会ったことがないのかな……。 「とにかく、これからも応援し続けますから!」  なんでもいいや、笑顔で押し切れ!  という感じで宣言すれば、推したちからキラキラとした眼差しを向けられる。 「ヒナ、お姉さんのこと覚えておくね! そういえば、お姉さんの名前、聞いてなかったよね」 「あ、わたし、黒瀬乙姫です」  ヒナに聞かれて名乗ると、場の空気が変わった。    ――え、なに、どういうこと? 「黒瀬乙姫って……」 「あの、可愛いファンレターのお姉さん!」 「そうそう、個別にイメージカラーの便箋でファンレター送ってくれてるの!」  ヒナ、マナ、アリスの三人は目を輝かせている。  わたしがメンバーひとりひとりにファンレターを送っていたのは事実だ。  推しそれぞれのカラーの封筒と便箋をデコって、月イチで送ってた。  ただのオタクの(サガ)なのに。 「ほら、皆、これ以上ファンの方を困らせないの。変わらず応援してくれるんだから、活動でお返ししていきましょ」  マネージャーさんの鶴の一声で、騒いでいた推したちは静かになった。 「えっと、じゃあ、わたしはこれで失礼します」  長々と居座ってしまったけど、そろそろ帰らないと撮り溜めていたアニメの消化が追いつかなくなる。  挨拶して控え室を出ると、ミコが後を追うように出てきた。 「待って、お姉さん。駅まで送らせて」  ――White?  言われた意味が分からず、頭の中がクエスチョンマークで埋まる。  え、推しが私を送る? 何このシチュエーション。    
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