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 このパジャマを着て、いったい何日が経過したのだろう。  ボタンは上から2個、とれたまま。何もしていないのに、あちこち穴が空いている。袖口もすり切れ、ズボンに至ってはとっくにゴムも伸び、その伸びきったゴムを結んでなんとか履いている。  これ自体6年くらいは着ている気がするのだが、なぜか落ち着くので捨てられずにいる。そしてここ数日、ずっとこれを身につけているのだ。  ちょっとコンビニに行くときは、上からトレーナーを着、下だけデニムに履き替えて、帰宅したら即元のおんぼろパジャマに着替える。  私のルールでは、3日着たら洗濯は当たり前だったのだが、この1週間くらいは、何もかもどうでもよくなり、下着は取り替えてもとにかくこの着古しすぎたパジャマを身につけている。なんとかまとっている。胸元があくものだから、シュシュで結んで着る物としての機能を果たしている。  おそらく今日もこのままだ。  綿100%の無印のパジャマは、タグもないし肌触りがとにかくいい。そしてこの着込んだ感、肌に自然となじむ感触がたまらない。というか、正直この1週間、シャワーを浴びる気にもなれずやり過ごしてきた。こんな不潔な私の体に付き合わされている、気の毒なパジャマ。  このパジャマとお別れするために、新しいものを購入してあるのだが、綺麗な形のまま、大切にしまわれている。  色々あったのだ。それからどうも心の調子も良くなくて、最低限のやることをしたら、万年床に臥せる。その時のこのパジャマの密着する心地よさ。  別に「ブランケット症候群」とかではない。このくってりとした感じと、あまりにボロボロになっているパジャマだけが、今の自分を受け入れてくれるような気がして、私の方がしがみついている感じなのだ。  疲れた。あと数日で3月に入り、きっとあっという間に貼るが訪れる。  冬が好きな私にとって、苦手な季節に変わる。  あのまま無理してでも、我慢してでも、仕事を辞めなければ。  いや、どちらにせよ私は絶対爆発していただろう。  やはり疲れている。生活どころか、人生そのものに。  こんな私に優しいのは、このどうやったらそこまでボロボロにできるのか?という年季の入ったパジャマだけなのだ。
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