最後の電話

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私は、小さい頃から電話交換手になりたいと思っていました。 一生懸命勉強して私は女学校に進学し、卒業後、地元である真岡郵便電信局に就職することができました。 郵便局は、手紙のやり取りだけではなく、声のやり取りも行っています。 そのどちらも素晴らしい仕事ですが、私は電信の業務の方に就くことができました。 私は、念願の電話交換手になることができたのです! 国の通信業務を支える重要な仕事ということで、郵便電信局のお給料は、女性がもらうお給料としてはとても良い方です。 電話交換手になれたことで、家族や親戚一同がお祝いしてくれました。 内地や満州に行った親戚からも、お祝いが届きました。 これでよいところにお嫁に行けるね! なんてことも、いろいろな人から言われました。 けれども、私はまだ17歳なので、結婚は考えていません。 今は、交換手の仕事を頑張ることで精一杯です。 そして、この仕事はとてもやりがいを感じることができる仕事なのです。 私が取り次いだ電話で、いったいどんな会話がなされたのか。 私にはそれを聞くことができません。 だから、私は妄想します。 赤ちゃんが無事生まれました! という電話かな…… 病気で倒れました、あるいは、亡くなりました、という電話かな…… 電話は、いいこと、悪いこと、あらゆることを伝えます。 そこには、私が顔を見たこともない人たちの、深い深い人生があります。 私がプラグを差した後、そこで行われた会話。 電話で人生が大きく変わった人も、たくさんいると思います。
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