第1号 ダイナー店員と新聞記者、死神パワーで悪霊退治はじめました

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「そうじゃなくて……新聞記者が夢だったんだよ。俺はどうしても記者になりたかった」 「それで、うちに押し掛けて来たんだよな。あれからもう二年か……」 「三年です」 「どっちでもいいだろ? 当然、門前払いだろうと思っていたけどな。おまえは言った『記者になるためならなんでもします』と」 「よく覚えてますね」 「忘れるもんかよ。あんなに必死に頼み込んできた奴、うちで初めてだよ」  たしかに、今どき『なんでもする』なんて、ある意味無責任な事を口にする者は少ないのかもしれない。 「まさか……それで本当に何でもしているって事ですか?」  デックが確認する。俺は「そうだよ」と呆気からんと肯定した。 「俺は学がないかもしれないけど、身体能力には自信があるからな」 「あと、しぶとい生命力もな」  編集長が余計な一言を付け加えたそのとき、デスクの向こうから「おーい」とやまびこのような呼び声がした。 「エスターちょっと来てくれ」  編集部の社員だ。編集長に用があるらしい。  当の彼は「はーい、今いくよ」といい、手をハンカチのようにひらひらとさせる。 「さて、おしゃべりも程々にして仕事するか」  エスター編集長は珈琲の香りと共に俺達の元を立ち去り、編集部のデスクへと足を運んだ。 「まさか先輩にそんな過去が……」 「まあな」 「でも、そこまでしてどうして記者に……」 「ん? それはな、俺が十歳の時に――」  俺が自らの過去を語ろうとしたそのとき、ずもっ、と頭上に大きな影が浮かんだ。
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