第1号 ダイナー店員と新聞記者、死神パワーで悪霊退治はじめました

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◆    やっとの思いでオフィスへと戻ると、俺たちをみるなり編集長は目を丸くしていた。 「ただ今帰りました……」 「おお、……って、どうしたんだよ!」 すると、デックが口を開いて掠れた声でいきさつを語り出す。 「なんか、突然黒い炎に焼かれて……」 「おまえは喋らなくていいから。ほら、まずは火傷を冷やせ」  冷凍庫から取り出した氷を袋に入れた出来合いの氷嚢をデックに渡す。  代わりに俺がことのあらましを編集長に説明した。 「もしかして、さっきこの辺りで起きた大規模な火事と関係あるのか?」 「火事?」 「ああ、何十人もの人間が火あぶりだって。それも……黒い炎に」 「!」  黒い大火事。俺たちが見た光景と同じものだ。 「そうです! デックが焼かれたのもその黒い炎――」 「話は聞かせてもらった」  俺の言葉を遮る低い声が響く。声の主の方を振り返ると思わず「げ……」と心の声が漏れた。 「局長……」 「丁度いい。局長室に来い」  俺は半ば強制的に局長室へと連行された。  俺が連れられた局長室はタイプライターのコレクションと流行の家具に囲まれた厳かな個室だ。  紫煙と葉の焼ける香りが漂う。煙草を吸っていたのだろう。  当然のことながらこの空間に居るのは俺と局長の二人だけだった。つまり周りの目はない。それ故に局長は皮張りの高級椅子でふんぞり返って俺を睨みつける。 「分かっているな。これは大きなネタだ」 「黒い炎による大火事が……ですか?」 「それ以外ないだろう。単刀直入に言う。おまえ、このネタ掴んで来い」  そんな気はしていた。どこからともなく現れる黒い炎が人を灰にしてしまう。  こんなにセンセーショナルで恐怖を煽るネタをこの男が見逃すはずないだろう。 「運がよかったな。うちの関係者である奴が被害にあったからこそ、独占インタビューができる」  運が……よかった? 独占インタビューって、どういう事だ? 「あの炎の正体は何なのか? 彼にどういう要因があってあのような事故が起きていたのか? デック本人からじっくり根掘り葉掘り聞け」  あんな目に遭ったデックに根掘り葉掘りだと? やけどを負って傷が癒えていない彼にそんなことができるわけないだろう。 「いいネタを掴んだな。黒い炎の悲劇がいかに凄惨か分かる火傷の写真と気になる見出しを付ければラジオもテレビも――」 「局長! 彼は……被害者ですよ?」
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