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俺は局長の言葉を遮って叫ぶ。すると奴は目を細めて俺を一瞥すると深くため息をついた。
「なんでも取材するのがおまえの仕事だろう? ヒューバート・サーシェス」
「っ……」
痛いところを突かれる。たしかに、俺は記事の為ならなんだって取材をするという契約のもとで雇われている。
でも、それでも――!
ふと、脳裏に一枚の写真が過った。
そうだ、あるじゃないか。とっておきのネタが。
ポケットに入れていた写真を取り出して思い切り机に叩きつけた。大きな音に局長は驚き身を揺らす。
机上に置かれたポラロイド写真にはバターブロンドの短髪に強面の男が写っていた。
「それよりも……もっと良い取材対象が居るんですよ」
大鎌を振るっていた彼そのものだ。だが、そんな存在局長は知る由もなくて小首をかしげて鼻を鳴らした。
「誰だこいつ」
「分かりません。しかし、彼は黒い炎を消していました」
「炎を消す?」
「被害者に話を聞くより、炎に関わりのある彼の方がよっぽど事情を知っていそうだと思いません?」
俺はゆっくりと口角を上げながら提案をする。
「……ふん、好きにしろ。記事が載るのならなんでもいいぞ!」
局長は捨て台詞を吐きながら、椅子をくるりと回転させて背を向けた。
タイムリミットは明日の朝。それまでにこの事件の真実を記さなければならない。
局長室から編集部へ戻るとエスター編集長が心配した様子で俺を迎える。
「おい、大丈夫か……」
「ええ、平気ですから」
俺は手をひらりと振る。その手でモッズコートを取った。
が、腕を掴まれる感触が伝わった。
「どこ行く気だ」
「決まってるでしょ」
なんで、そんな当然のことを聞くのだろう。
「取材ですよ」
俺が答えを口にした時には編集長の表情が心配をするものから恐怖の様なものに変わっていた気がする。
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