ゲオルグ=C=リーの受難

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「ですから……」  その言葉に俺は一気に子ども時代へと引き戻された。十五年も経って、こんな銀河の果てで、地球の言葉とは全く違う言語で、同じ台詞を聞く事になろうとは!  その言葉は俺の大切な思い出の中にある、人生を決めた重要な一言だったのに。  俺、ゲオルグ=C=リーは、異星知性体が残した遺物『ロスト(L)アナザー(A)メカライファー(M)』の研究者で彼らの保護と監視を仕事にしている。辺境の宇宙が仕事場になるこの職を選んだ理由はただ一つ。出身母体であるリー一族からなるべく遠くに離れるためだった。  AI学者を多数輩出している一族は太母・リリス=リーを始祖とする巨大な女系家系だった。  リー一族の女性はそのほとんどが結婚しないせいで、彼女達は一族で地球民族全ての遺伝子をコレクションしようとしている。いやいや、女だけでクローン増殖をしてる。等々に噂されていた。  で、リー一族の中でも俺の出身であるC系統は元祖キャンディー=リー(そう、C系統のCはcandyのCだ! 冗談みたいだが事実だぜ!)がその元々メイン研究であったAIではなく、異星知性体の研究を始めた事から、一族の中でも異色の研究者が多い。  そして、C系統はなぜか男子の出生率が高かった。とは言っても今百人いる一族の中で男はC系統に所属する四人だけ。俺。又従兄弟が一人。伯祖父も一人。  そして物好きにも、一族の女性と結婚する選択をした叔父のホーガン=C=リー。それだけだ。  女だらけのリー一族。その中の『男』として生まれてしまった俺は、リー一族が力を持つ地球の居心地は悪すぎた。ていうか、リー一族の中で男だとそれだけで出来損ないみたいに見られるんだよ! だから、一族の男は居心地悪くて大抵、成人する前にリー家を出るんだけどな。  でも、俺は『L・A・M』に関する仕事を職務にしてしまった。いくら人類が探査している銀河の最深部を研究フィールドとするこの職でも、知性体の研究に近い分野である以上、リー家の女どもに会う危険は排除できなかった。ていうか、今回ばっちり関わるハメに!  ああ! 又従兄弟のロランみたく宇宙都市開発設計者にでもなればよかったかな? それとも、伯祖父のように政治家でも……いいや。結局今の世界を生きようとすると、AIに関係せざるをえないんだ。どんな仕事についても結局リー家の誰かには会うだろう。そう銀河中をあっちこっち避け続けても、どっかでリーの女性陣にぶつかるんだ。  そう今のように!  俺は、目の前に仁王立ちになってる不倶戴天の敵、シス=C=リーを再度睨みつけた。
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