自分RPG

1/1
前へ
/9ページ
次へ

自分RPG

私はどこにでもいる高校生だ。  何も考えないで一日を浪費している人たちよりは、友達もいてそれなりに充実した生活を送っている。  だが、私はそんな日常に飽きてしまっている。 “なんか面白い事起きないかなぁ…。”と思いながらいつもの登下校のゴミ捨て場をただ通り過ぎようとした。  あからさまにゴミ捨て場に目立つようにカセットテープが置かれていた。 『ちょっと待てーい!お前さん‼』 と、性能が悪いトランシーバーみたいな音がカセットテープから聞こえた。  なんでカセットテープが、ラジカセがないのに聞けてんだ? そう思った。 気になったので近寄って手に取ってみたらカセットテープから人が出てきた。 『おぉ…!?ようやっと解放されたわい!封印を解いてくれたのはお前か?』 「えぇっ!ちょ…、なんでカセットから人が‥‥!…えぇっ!?」 カセットテープから人が出た驚きで取り乱したので答えれなかった。 『まぁ…。お主ら人間たちが妖精なんて見たことないだろうから取り乱すのもしょうがないか…。』  その妖精は髪をポリポリしてがっかりした顔をしながらこう言った。 人が出てきた状態でも音響は変わらなったが。 『我は妖精ファフニールじゃ!なんやかんやあって…カセットテープに封印されていたんじゃ。お主が封印を解いたんじゃな…!…ところで今は西暦何年じゃ?』 「せ……西暦2023年ですけど…。」 私はひどく取り乱していたので、そんなことしか言えなかった。 『せ…西暦2023年じゃと‥‥!?…あの野郎めっ!よくも我をそこまで封印しくさって…許さんっ絶対許さんっ‥‥‥。』 …とそれはそれは何時間もファフニールさんは怒鳴り散らし怒り狂ったので省略します。 『…コホン。まぁとにかく、我は人間たちが幸せになるよう妖精界のアイテムを配っているんじゃ。お主には封印を解いてくれたのでな、そのアイテムを配ることにするわい!』1f466f4c-2e8d-407d-9bc0-258fac73d317「は…はぁ、とりあえず貰いますけど。」 『よく言った!お主よ!それでは早速使い方を教えるわい。』 妖精界のアイテムの使い方を教えてくれた。 あと大切な“ルール”も。 『自分RPG は自分の人生をできる。…だからこそ、好き勝手できるが、ことを…忘れてはいけんぞ!』 とクスっと笑ったファフニールさんはどことなく怪しさと迫力があった。 「‥‥で、でもっ!ゲームカセットと、ゲーム機がないんでプレイできないですよっ!」 私は疑問に思ったことをファフニールさんに聞いた。 『それは、大丈夫じゃ!…んっしょっと!(これでいいかな?久しぶりにやるからやり方忘れてたわい)…ほれ受け取れぃ。』 そう言うとポンッと音がして、ファフニールさんが投げたものを落とさずに拾うと、私の手には、ファフニールさんが入っていたカセットテープと、古ぼけたラジカセがあった。  これがゲームカセットとゲーム機なんだろうけど、ファフニールさんが入っていたカセットテープ…使っちゃっていいのかな? 『あぁ、それは大丈夫じゃ。もうそのカセットテープには我はいないからな。』 私が考えていたことを見透かしているようにファフニールさんは目に狐があったが、それで心を読めるのだろうか? そう思っていると気が付けば、私の部屋にいた。  そして憑りつかれたように、自分RPGをプレイしていた。 数日プレイしていたが、ファフニールさんが言っていたことは本当だった。  ゲームでプレイしていたことが現実になった。 もちろん、セーブ、ロードもできた。  だから、好きなところに戻ってやり直し、テストも、運動も、もちろん男子にも、モテるようになった。  私は優越感を感じて、この日常に満足していた。  ゲームでいつもの陽キャ友達とお出かけして別れたとき、横断歩道で私は車に引かれたのだ。  そしてふと忘れていたファフニールさんの言葉を思い出した。 『自分RPG は自分の人生をできる。…だからこそ、好き勝手できるが、ことを…忘れてはいけんぞ!』 ……あぁ、ということは、私、死ぬ‥‥ってこと? …なんで?私悪いことなんてしてない! と心の奥底の私が囁く。 あぁ、思い出した。 今まで関わっていた友達とは、縁を切って。  性格も傲慢になっていった。  なんでかっていうと、陽キャたちを遊んだり、話するのがより楽しかったからと、自分RPGで、何度でも人生が好きなようにやり直せたりしたから、調子に乗ってたんだと思う。 ‥‥そうなった私にファフニールさんが天罰を与えたんだ。 “……私なんて馬鹿だったんだ。“ そんな後悔が一気に満たされていく。 罪悪感の中、私は意識が薄れていった。 ~ファフニールさん視点~ いやぁ…。久しぶりだとは言えど、幸せにならなかったか~。  やっぱり人間はじゃの~。 でも妖精界で、人間に不思議なアイテムは、慣れている妖精しか渡すなって言われてたからな~。 我も妖精の力で幸せにしてから、アイテムを使うことにすればよかったなぁ~。 …そうしたら失敗することなかったのに。  まぁ、次じゃ!次で幸せにしてやるんじゃ! じゃから、それまで、眠っとれ。気の毒な少女よ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加