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「何、してるの?…」  つぶやくような言葉が、 私の口から滑り出た。 「夢を、おくっていた」 「夢を、送る?」 「いや、〈贈る〉だ…」 男は、 目を細めて私を見、 手を伸ばした。 「こちらにおいで」 その言葉に促されて、 私はすんなりと 男の手をとった。 「ずいぶんと多くのものを忘れてきたね」 男は、 私を傍らに座らせると、 もう一度笛を吹き始めた。  さきほどとは 違うメロディは、 さきほどとは 違う変化をもたらした。 つまり、 先ほどは 出ていくばかりだった光の球が、 今度は集まってきたのだ。 色も、 黄色から 青白い光に変わっていた。 光の球が十分に集まると、 男は笛を吹くのをやめ、 もう一度私の手をとった。 そして、 袋の中から光の球を取り出し、 私の手のひらにのせては 反応を見る、 という動作を繰り返した。 何度目のことだっただろうか、 ある球が 私の手にのせられると、 輝きが増し、 その光が 私の身体をつつみこんだ。 「あっ……」 思い出した。 あの時、 私は事故にあったのだ。 それを自覚した瞬間、 私の心と身体が ぴったりと 重なり合うのが感じられた。
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