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そのうちに
丘の頂上に着いた。
「ここだ……」
男の言葉に
顔を上げたはるかは、
言葉を失った。
何とも荘厳な眺めが
目の前に広がっていた。
とてつもなく大きな
水晶の柱が三本、
地中から天に
突き上げるように立っており、
そのまわりには
大小さまざまな
キラキラと光る
純度の高いかけらが
無数に転がっていた。
「夢幻石の中から、
自分のための石を
選んでごらん」
男が
はるかにむかって言った。
夢幻石とは、
この水晶のことであるらしい。
「どうやって?…」
はるかは
困惑ぎみにたずねた。
「目を閉じて、
心を落ち着かせる。
心が落ち着いたら、
目を開いて探す。
必ず君と
引き合う石があるはずだ。
…やってごらん」
はるかは
男の言葉の通りに、
ゆっくりと目を閉じた。
はじめはただ
ざわざわとしていた心も、
そのうちに、
ストンと
深いところに落ち着いた。
はるかはそっと目を開け、
あたりを見回した。
すると、その中に、
どうしても
目を離せない石があった。
何か、他の石と
違ったところが
あるわけではない。
ただ、
〈目が合った〉としか
言い様のない感覚に
突き動かされて、
はるかはその石を手に取った。
「これ…?」
その石は、
ひやりとするほど冷たいような、
じーんと温かいような不思議な感覚を、
はるかの
手のひらに返してきた。
そしてそれは、
はるかにとって、
生まれる前から
自分のものであるかのように、
手になじんで感じられるのだった。
「自分の石を持って、
真ん中の石柱に触れてごらん」
男が言った。
その言葉に従い、
はるかは
石柱にそっと触れた。
キィィィーンと
高く澄んだ音が
聞こえた気がした。
光の反射する音が聞こえたら、
きっとこんな音だろう。
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