ボクのマスター

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 ただそうするべきだと思ったし、そうしたかった。  悲しむマスターがとても愛おしく思ったのだ。 「慰めてくれるの? ありがとう、ジョバンニ」  目元を赤く腫らした顔でマスターは無理に微笑む。  まだ目には涙を湛え、声も濡れている。とてもぎこちない笑顔。  だけど泣き顔よりはずいぶんといい。  マスターの魅力はきっと笑顔。笑った顔がいちばん素敵なのをボクは知っている。ボクはそんなマスターをずっと見ていたい。  その時、ボクはハッとした。これが「好き」という感情なんじゃないだろうか。  告白は好意を寄せた人にそれを伝える行為。  ならばボクがするべき行動はただ一つ。  ボクは彼女を抱きしめたままその耳元で囁いた──。
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