葬儀の後

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「・・・美玖・・・変わってたなぁ。」 「・・・そうだね。」 閑静な住宅街に出たところで、香織が口を開く。 「6年生になって、初めて同じクラスになった。」 「うん。」 「特別可愛いわけじゃないし、何考えてるか分からなかった。」 「ひどいなぁ」 香織の口のキツさは全く変わらない。進学先では大きな問題を起こさないことを願いながら、私は笑った。 「でもさ、何だかんだ一緒にいたよね。美玖と香織って。」 「あいつさ、6年生にもなって靴紐結べないんだよ。はぁ?って思ったんだけど、ずっと昇降口でうずくまってるから、仕方なく結んでやって。そこから結構一緒にいたんだと思う。」 「ふーん。」 最上学年の女子として生活するのは、正直息が詰まった。 教師はやたら厳しくなり、親に褒められることも少なくなった子どもたちは、対抗するようにいくつかの派閥を作り上げた。それは良く言えば仲良しグループ。悪く言えば・・・共依存の麻薬みたいなものだった。 男子の誰かがふざけてヤクチュウって言ってたけど、あながち間違いじゃない。リーダー格のような存在と、ご機嫌取りを友情と勘違いしている取り巻き達。周囲の大人たちも、面倒なことに巻き込まれるのは御免だっただろう。ちょっとしたイザコザは、成長過程と正当化されて見て見ぬふりをされていたと思う。 「正直 どこか世間知らずではっきりしなくて、ムカつくとこもあった。だけど、しょうもない奴らと無理に一緒にいるよりマシだったし。」 「そうなんだ・・・」 香織らしい。 そう思いつつ、実はちょっと大変だったことも覚えている。 女子のグループ粘着力が強まれば強まるほど、二人は孤立した。少なくとも、それを許さないと感じる人間もいただろう。 「わけわかんないよ。卒業式前日になって、仲良しごっこ始めやがって。」 「・・・缶バッチ?」 妙に気持ちが高まっていたんだと思う。 誰かが人数分の缶バッチを買ってきて、それをクラスの女子全員が半強制的に受け取っていたのだ。確か、桜が大きくプリントされていたと思う。 「あの子さぁ。なんて言ったと思う?」 香織が呆れた顔で問いかける。 「なんて言ったんだっけ?」 「『桜が嫌いだからいらない』って。」 「・・・」 思い出した。 世界(きょうしつ)が凍り付いたのも。美玖(あのこ)が初めて拒否をしたのも。 「・・・バカみたい。最後ぐらい仲良しごっこに付き合ってあげればよかったのに。」 香織がつま先で桜の花びらを蹴散らす。 美玖への苛立ちのようで、別の何かを振り払おうとしているようだった。 「でも、本当に桜が嫌いだったのかも」 「嘘じゃん。」 私が言いかけたところで、香織が立ち止まった。
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