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「じたばたするんじゃねえよ、シェイリー。こちとら、もうちんけな海賊じゃねえんだ、閣下の部下だぜ。おとなしく親子そろって港で吊るされちまえ。ここらの海のことは、おれが全部うまくやってやるからよ」
シェイリーはぎりっと歯噛みした。
クアイドは一族の頭目ではあったが、王ではない。
仲間たちから推挙されてその地位につき、利益を皆で分けて常に助け合うことに心を配ってきた。
そうしたやり方が不満で飛び出したキャムレンは、この仮面の男の手先となって、仲間たちの海を自分ひとりのものにしようというのだろう。
「無理だね。あんたがだませるのは、せいぜい陸の物知らずだけさ。海の仲間はそうはいかないよ」
シェイリーはせめて言い返した。
キャムレンはせせら笑った。自分の優位を疑いもしない様子だった。
だがそのとき、仮面の男がシェイリーに言った。
「なんでもクアイドは、おまえは実の娘ではなく海賊でもないと訴えているそうだな」
クアイドが喉を嗄らしての主張は、届くには届いていたようだった。
とはいえ認めるつもりもない。シェイリーはすぐさま鼻で笑った。
「あたしたちが海賊じゃないのは本当、でも親子じゃないっていうのはうそだよ。そこの屑と違って、親父はうそが下手でね」
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