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「シェイリー──おまえに言っておかなきゃならんことがある」
背後から聞こえた父クアイドの声は、珍しく思いつめている。
あたりの騒音に負けないよう、シェイリーは声をはりあげた。
「いま忙しいんだからあとにして!」
実際、ゆっくり話を聞いている暇などない。
海上の風は荒れ、甲板も大きく揺れ動いて、頭布の下の潮焼けで赤茶けた髪をなびかせる。
女だてらに人生のほとんどを船上ですごしてきたシェイリーも、油断すれば今日十九歳でその人生が終わりかねない。
「いや聞いてくれ、シェイリー」
空気が読めないことはなはだしく、クアイドはさらに言ってきた。
シェイリーは歯を食いしばり、腕をふるった。
直後、がきん、と派手な金属音がたつ。
襲いかかってきた兵士の槍を跳ね飛ばすことに成功したシェイリーは、怒りをこめてクアイドに怒鳴る。
「だから、いまそれどころじゃないでしょうが!!」
巧みに船を操りあたりの海域を支配してきたシェイリーたち海の一族は、一般には「海賊」と呼ばれている。
といっても実際は通過する商船から通行料をとる程度なのだが、今回は違った。
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