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レンタル屋
「藤野、来週の飲み会、コロナで任意参加だけどどうする?」
半ば脅迫気味に訊いてきたのは直属の上司の山北だった。商社の営業部に勤めている私は、この会社の旧態依然とした雰囲気にどうにも馴染めていなかった。まずコロナが流行っているのに飲み会を行うことを決めた部長の神経がどうかしている。上が変わらなければ、下の人間も参加せざるを得なくなり、「任意」が「強制」に変わる。そして断るものには翌日以降しばらく冷たく接する。「任意」という言葉を使って、世間への無駄な配慮をするぐらいなら強制参加と言われたほうがまだ仕事だと割り切れるのに…。なんとも会社の思想に染まったずるいやり方だ。
「すいません、来週は入院してる祖母の世話で行けそうにないです」
できるだけ申し訳なさそうにか細く声を出しながら、困り顔で伝える。実際は祖母は私が小4の時に亡くなって、実家の茨城にお骨が納められている。家庭の複雑な事情に他人は弱く、たまに飲み会を断る嘘の口実としては良いものだった。
山北は心配そうな顔をしながら一言、わかったとだけ言ってデスクに戻っていった。その様子を見て内心ほくそ笑んだ。これで無駄な出費がなくなって、上司のダルがらみに付き合わなくてもよくなった。飲み会当日は浮いたお金でゲームソフトを買って遊んで過ごそうと思った。
仕事は21時過ぎに終わり、会社のある御茶ノ水から自宅のある金町に向かった。実家のある茨城から東京に引っ越す際に金町を住処に選んだ理由は3つあった。
一、新御茶ノ水駅まで千代田線1本で30分程度で行けること。
二、比較的東京の中でも下町にあり、家賃と食べ物の相場が安かったこと。
三、人の数が程よく、過ごしやすそうと思ったこと。
結果的に家が大好きで人ごみが苦手な私にとっては立地的に当たりを引いたと思っている。
駅に着くまでの間、電車に揺られながらイヤホンで音楽を聴き、スマホで欲しかったゲームソフトを注文し、電子書籍を読みながら暇をつぶした。
金町に着くと、時勢柄、飲み屋が閉まっていて閑散としていた。会社の飲み会は嫌いであったが、人同士が楽しくお酒を飲んでにぎやかにしているのを遠巻きに見るのは好きだったので、寂しいと思った。茨城からこっちに移り住み、地元の友人や家族と会うことがなくなって人恋しくなっているのかもしれない。東京は地元に比べると遊ぶところが多くて楽しいが、一人だと虚しさの方が勝った。あいにくこっちの友達はいまだにゼロだ。
南口の飲み屋街を抜けて住宅街に入り、自宅のあるマンションを目指して歩いた。2月の寒空の下、帰宅していたこともあり、すっかり体が冷え切ってしまった。手袋をつけていたが、冷え性の自分にとっては指先が冷えて仕方がなかった。中から体を温めようと途中のコンビニでおでんと温かいお茶を買った。コンビニを出てお茶を飲み、ほっと一息ついた。
マンションに着くとエントランスで暗証番号を入力して中に入り、エレベーターで3階のボタンを押した。3階に着くとエレベーター近くの301号室の自室の鍵を回し、中に入った。
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アラームが部屋中に鳴り響いた音がうっとおしくて目を開けた。眠気を振り払いながらソファから立ち上がり、ベットに置いてある7時と表示された目覚まし時計を押した。
目を開けて部屋を見渡すと、ビール缶3本と食べかけのおでん、ポテトチップスの袋がソファ近くのテーブルに散乱していた。 昨日風呂に入らずに、テレビを見ながら晩酌していた最中に疲れてソファで寝落ちしていたようだった。ソファのひじ掛けに頭を置いて寝ていたせいか首が痛い。身体中が汗まみれだったこともあり、部屋を出てシャワーを浴びた。シャンプーで頭を洗っている最中に今日が休日だったことを思い出し、ため息をついた。
浴び終わって部屋に戻ると、テーブルのゴミをゴミ箱に放り込む。朝からゴミを見て気が滅入った。気を取り直してソファに座り、余ったおでんを食べながらアクションゲームをだらだらと楽しんだ。テレビの画面に映った敵の兵士をコントローラーの丸ボタンを連打しながら斬り続けていると、うまくいかない仕事や人間関係の悩みから現実逃避できた。
ある程度キリがいいところまで楽しみ、画面から目覚まし時計に目を移すと13時になっていた。昼ご飯でも食べに行こうかと家を出ようとしたところで母親から電話がかかってきた。休日に親と話すことはあまり気が進まなかったが、しぶしぶ出ることにした。
電話に出ると最近の世間話から始まり、仕事や彼女との同棲はどうかという話になった。
「仕事?順調順調!今流行りのEV車関連の大きめの案件を任せてもらえるようになって期待されてるみたいですごいうれしい!」
「真紀が栄養管理士だけあってバランスのいいものばっかり作ってくれて、食べてるから健康そのものだよ!ジムにも一緒に通いだして毎日運動してて楽しいし!」
努めて明るく答えると母親は満足したのか「そう、仕事もプライベートも楽しそうでよかったわ。恥ずかしがってるようだけど、真紀さんにも今度会わせてね」と言った。私は「どうかな、今度本人にも訊いてみるよ」と返事をして電話を切った。
電話を切ると目の前の8畳一間のさみしい現実が広がった。
本当は仕事は4年たっても木っ端な案件しか回してもらえていない。新規で営業をかけるも口下手のせいか成果が出ず、ノルマを毎月達成するのがやっとだ。後から入ってきた後輩たちにはどんどん抜かれ、裏では先輩、上司と一緒に陰口を叩いているようだった。会社に行くのは辛いが、この生活を守るために必死にしがみついていた。一度レールから外れるともう社会に戻れなくなりそうな気がして怖かった。
親には彼女との同棲生活と言っているが、大学を卒業してから彼女どころか友達もできていない。会社の人や家族友人にひとり身とバレると非常に面倒だった。私のような26歳のアラサー男が彼女がいないとわかると一気に世間は落伍者、社会不適合者というかわいそうな目で無用の心配や応援、時には見下しをしてくる。その対応に疲れて社会人2年目の時に私は架空の彼女の真紀という人物を作り上げて保身に走った。しかし、だんだんと居もしない彼女の作り話を他人に語っていくうちに虚無感にさいなまれ、疲弊していった。
ちょっとした自己保身のためについた嘘はどんどん会社、家族、友人にいたるまで広がっていき、取り返しがつかなくなっていた。友人には仕事のことで相談を持ちかけられるが、こっちの方が聞きたいくらいだと内心叫びながら口ではエールを送っていた。会社の人と家族には彼女との生活を根掘り葉掘り訊かれ、ネットで検索したエピソードを今までの話と整合性が合うように気をつけながら話した。
嘘を重ねることに慣れてしまったのか、些細なことでも嘘をつくようになり、世間的に虚言症と呼ばれるような状態になってしまった。毎日他人が自分の嘘に感づいていないか気にしだし、バレた時の反応を想像し、嘘の罪悪感に押しつぶされ、眠れない時もあった。自分が何者であるのかがわからなくなり、自己欺瞞に陥って苦しんだ。いっそのこと最初からごまかさずに打ち解けていたほうが楽であったかもしれない。
「もう限界だ」
意図せず口から本音の独白が漏れた。
独りで暮らす部屋の中でつぶやいた小さな声は大きくこだましているように聴こえた。
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半年後、私は相変わらず周りに嘘をつきながら過ごしていた。しかし前と違って気負った顔をせずに自然な作り笑いを浮かべて平然と嘘を意気揚々と話していた。
限界発言をしてから翌日、私は気休めにSNSで匿名の捨てアカウントを作って今の現状を素直につづった。文章にして発信するだけでも少しは嘘の罪悪感の重みは消えたが、やはりこういった物は告解室で懺悔するキリスト信者のように人に打ち明けなければ解消されるものではないと気づいた。だからと言って無神論者である私は懺悔室に行くことに抵抗を感じ、踏ん切りがつかないでいた。
そんな時、SNS上で「レンタル屋」というアカウントを見つけた。アカウントの顔であるアイコンには紺色のパーカーを着た20台前半と思われる平凡な顔立ちの男の顔が載せられている。無表情でこちらに顔を向けながら生気のないまなざしで映るはかなげな写真が印象的だった。最初はアカウント名からCDやDVDの貸し出しを行っている何かの業者かと思ったが、つぶやきの内容からどうやら違うようで、気になってアカウントのホームに飛んだ。すると興味深い紹介文が記載されていた。
【私自身を貸し出します。依頼料は新宿駅からの交通費と飲食代等の諸経費だけもらいます。ご依頼、お問い合わせはDMまで。簡単な受け答えと相槌以外は出来かねます。】
どうやら自分自身の貸し出しを行っているアカウントのようだった。自身が商品と主張する奇抜なプロフィールに好奇心を抑えられず、最近の彼のつぶやきを追った。
「独りでは行きずらいとのことで焼肉屋さんに同行しました」というつぶやきとともに依頼主と焼肉に行っている写真が載せられている。リプ欄を見ると「焼肉美味しそう…めっちゃいいね!」という好意的な意見や「人の金で肉を食べるなんていい身分だな」という否定的な意見に二分されていた。他にもカラオケやボーリング、ライブ、遊園地など独りでは行きずらそうなスポットに同行しているようだ。依頼主のアカウントに飛んで見るとおおむね満足しているつぶやきが見て取れる。
ぶっちゃけ怪しい詐欺アカウントだと感じたが、こういう他人にこそ本音をぶちまけた方がSNSでつぶやくよりもすっきりするのではないかと思った。仕事でもプライベートでも嘘をつきすぎて疲れていた私は半ばやけくそ気味に「一緒にドライブに行ってほしいです」と簡潔な文章で依頼した。
依頼してから返事のないまま翌日、やっぱり悪質な業者か何かと思い始めたときに返信が帰ってきた。
【ご依頼承りました、日時、集合場所、行先等のご相談をさせてください】
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金町から新宿まで車で一時間程度走らせ、待ち合わせ場所である新宿御苑近くの駐車場に車を停めて彼を待った。
ネットの人と会うのが初めての私は少し緊張していた。ヤバい人だったらどうしようかという不安が頭をかすめて落ち着かない。
待ち合わせ時間までの30分をスマホゲームをしながらやり過ごすことにした。画面の中の猫の機嫌パラメーターを分析してキャットフードか水かチャオチュールを選んで餌付けするシンプルなゲームだ。
とりあえず猫だからチャオチュール、寂しそうだからチャオチュール、怒っている時にこそチャオチュール、チュールチュールチャオチュール・・・
チャオチュールばかり与えすぎて猫の顔がキマッてきたところで車の窓にコツコツとノックの音が聞こえてきた。思いのほか熱中していたようだ。驚いて顔を横に向けると、アカウントの写真そのままの無表情の男が立っていた。
―こんにちは、依頼主の方ですか?
そういって尋ねられた私は頷き、彼を車の助手席に招いた。彼はお邪魔しますと恐縮そうに言って座った。そのちょっとした気遣いを見て、案外まともな人かもしれないと感じた。ただ口調が音声案内のSiriのようで機械的であるのは少し気になったけれども。
軽く挨拶をかわしたあとに、彼は依頼内容を私に確認した。
―本日の依頼内容は新宿から北柏までの日帰りで、道中話し相手になるという内容でお間違いなかったでしょうか?
私はその依頼内容で間違いないと首肯し、早速新宿から千葉方面へ国道405号線を使って運転する。知らない他人を助手席に乗せて走るのは初めてのことだったので、なんとなくいつもよりも運転がぎこちなくなる。
―よく千葉には行かれるんですか?
車内のピンと張った雰囲気を察してか、彼は会話の糸口をよこしてきた。やはり何度も知らない他人と話していると慣れてくるのだろうかと思った。
「都心から離れてちょっと行くと畑が広がっていて、その間の道路を走るのが好きなもので」
―自然が好きなんですね
「好きっていうか、実家が茨城の自然が多いところで。雰囲気がなんとなく似ていて落ち着くんですよ」
それからとりとめもない会話をし、コンビニ休憩と昼ごはんを挟みながら進んでいくと、森と畑の広がる場所に着いた。まだ2月ということもあり、稲の植えられていない荒涼とした景色が広がっていた。
車は土手下の脇に勝手に駐車する、こういったちょっとした田舎では取り締まる警察も居ないので、何時間停めても気が楽だ。土手下から彼と一緒に階段を使って、景色を見渡せるところまで登る。遮るものが何もないので、強い風が私たちの身体に吹き付けてくる。
ー畑と森が広がる場所に来ると、もう帰れなくなりそうで怖いですね。
そう言う彼の口ぶりからはまったく怖さというものが感じられなかったので、おかしくて少し笑ってしまった。本当に人間味がない人だ。多分学校で同じクラスメイトになったら、卒業まで変な人だなと思ってあまり話さない人種だろうと思った。
少し歩きましょうか、と誘って土手を散歩する。ぶっちゃけここに来るということ以外、ノープランで何も考えていなかった。職場や学校という共通事項のない他人と会うのは初めてのことなので少し悩んだが、クライアントはこちらであるので好きな散歩を決行させてもらうことにした。
それから一言二言話した後に一時間ほど土手を歩いた。相手がさほど気にしていなさそうな雰囲気だったので、こちらも気を遣う必要がなく、楽だった。機械的な口調もあいまって、本当にロボットと一緒に歩いているようだ。人の感情に過敏になっていた私にはこれぐらい気持ちに起伏がない人のほうがちょうどよかった。
それから私たちは土手の途中で立ち止まり、くさっぱらに座って休憩した。身体が冷え込んでいたので、持ってきたポットから温かいお茶をコップに注ぎ、彼に手渡す。お茶を一緒に飲みながら日差しを浴びた森をぼーっと眺める。
「…嘘をつく人ってどう思います?」
ふと自分の口から弱音が漏れ出ていることに驚いた。自分が今まで抱えていたものがあっさりと口から出たことで、あきらめと安心と解放感が混ざりあったような気持ちが湧いた。しかし、決して後悔などのマイナスな感情は湧いてこなかった。森の葉を一枚一枚見つめながら、数分間自分の気持ちを反芻した。すると、隣からSiriのような口調で返事が返ってきた。
―…何かお疲れのようですね。時間はありますからぜひお話を聞かせてください。私も仕事です。決して口外しませんので。
その頼もしい言葉を聞いて安心した私は、ぽつぽつと日ごろ抱えている嘘の一つ一つや気持ちを吐露した。もし他人が聞いたらきっとしょうもないことで悩んでいるとか、嘘ばっかりついている嫌な奴だといった感想を抱きそうなことをあけっぴろげに話した。私が10割話していたとしたら、彼は1割しか話していなかっただろう。彼はずっと軽い相槌と変わらない表情・口調のままだ。でも今の私にとっては、それがとても心地よかった。
ここには私と彼しかいない。そして彼は程よい無関心で私に接してくれる。そしてこのことは2人だけの秘密としてとどめて置ける。私はそのことに無性に救われていた。
長い長い吐露が終わり、周囲を見渡すと森に太陽がかぶってきていた。日が落ち始めるまで話していたようで、のどがカラカラだった。私たちはお茶をもう一度飲み終えると、沈んでいく太陽を見ながら歩いた。話し終えたときに日が昇ったままでなくて良かったと、なんとなく安心した。
土手下に戻ると停めてあった車のエンジンをいれて、新宿までのナビを開始した。私はナビ音声に助手席の彼を重ね合わせて、安心感を覚えた。
「帰り道に何か高いものを食べに行きませんか?」
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それからのこの半年間、彼に話を聞いてもらい、気持ちに余裕が生まれていた。そんな時、彼は大切な話があると言ってきた。お金はいらないのでいつもの土手で話さないかとのことだった。私は彼から急にそんなことをDMで言われて戸惑いながらも了承した。
いつも通り彼と一緒に土手を歩いていると、金属の大きい円盤が鎮座していた。私は歩きなれた道の途中に急に現れた円盤に戸惑っていた。なんの構造物だろうか。すると隣の彼がなんのためらいもなく円盤に触ると彼の頭上30メートルまで浮かび上がり、光が彼を照らし始めた。
ーいままで黙っていて申し訳ございません。私はあなたたち人間を観察するためにこの惑星外からやってきた生命体なのです。本実験はこの星にない新たな職業を生み出し、地球人にどのような影響を与えるかを観るために行われました。半年間の調査の末、非常に有益なデータが得られました。この度はご協力ありがとうございました。
突然言われた話に対して頭の整理がつかずに混乱していた私の目の前に円盤から女性が降ってきた。黒髪の目鼻立ちの整ったきれいな顔をした女性だった。ただ右腕が銃のような形状になっているところが気になった。
ー彼女はあなたが想像していたガールフレンドの真紀さんです。本実験に巻き込んでしまったお詫びに、あなたの好みに合うように遺伝子を組み合わせて作りました。基本的には他の人間と遜色ありませんが、自己防衛機能として右腕にサイコガンを搭載しています。この機能が使われたとしたら、アメリカの9.11よりも甚大な被害が及ぶことになるでしょう。あなたがしっかりと彼女を守ってあげてください。
サイコガン?9.11?頭に疑問符が大量に浮かび、混乱とする私の脳。猛烈な眠気に誘われ、ぼやけていく視界。
ーこれにてこの星においてのすべての実験が終了しました。我々は研究成果とともに自惑星に帰星します。なお本実験におけるすべての記憶はあなたの頭の中から抹消されます。ではよい人生を。
最後に見た光景は円盤に吸い込まれて行く彼の姿だった。
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日の光を浴びて目を覚ますと、いつもの8畳一間の現実が広がっていた。
ソファに目をやると、真紀がサイコガンに機械油をさしていた。休日の朝から美しい光景だ。起きた私を見て彼女は恥ずかしそうに、サイコガンを身体の後ろに隠した。
「しばらく油さしてないからさび付いちゃうと思って・・・」
照れた彼女の顔がとてもかわいかった。女の子はいくつになっても男に注油を見られたくないのだ。私は「手伝うよ」と言って彼女のサイコガンを手に取り、継ぎ目の一つ一つに丁寧に油をさしていった。少し金属部分も汚れていたので私は息を吹きかけて、タオルで優しく拭いていった。だんだんときれいになっていくサイコガンを見て私は恍惚とした表情を浮かべていた。彼女は顔を赤らめて「もうっ、終わり!!」と言って強引に手を離した。
ふと彼女の手元のパワーメーターをみると半分を切っていた。サイコガンのパワーの源は本人の生命力を表していると以前から聞いていた。どうやら朝食はまだのようだ。
「エネルギーチャージしないとね」
キッチンにサイコガンを向けながらウィンクをして彼女は言った。やれやれどうやら今日の朝食当番は私のようだ。
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