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誰かがいなくなった途端に、孤独を嘆く人間。
軌跡を無視し、終末だけを哀しむ皮肉な人間。
壮麗な過去に潜む晩夏の記憶に囚われた人間。
誰かを傷付ける人間が、絶えることを祈った人間。
綺麗では無い世界を愛せない、と微笑む淑女。
全てを包み込み、卑下する事のない妄想の中でひたすらに泣く少女。
手を差し伸べるのにも自分の評価が第一優先で、自分よりも冷たい手を繋いで、
「温もりを分けてあげる」
何て、相容れない態度で突き放して、自分は
『特別』で
『勇敢』で
『唯一無二』
のものだと云う。行動に移せた自分を過大評価して、勇気の出ない人間を見下して、それでもって本当の優しさを持った人間と打ち解けられる筈も無く。
薄っぺらい感情の裏で、凄惨な生への怨念を抱き、枯れる人間の影に気付かない。
何時か、何処かで、枯淡な声が響く。
「生きたかったなぁ」
「お、今日は頑張ってるな」
「俺もアイツらと同じ歳だったら努力してるさ」
「かっこいいなぁ」
_____________________
「あ、あぁ、やっぱりあいつは──今日も死にたいのか」
惨さの裏に、純粋な笑顔が有ることを知らない。
執着心の果てに、見違えるほどの希望が有ることを知らない。
永遠を謳う世界の中で、優しさを行使する容易さを知らない。
泣き喚く少女の心の中に、共に成長し合う風景があった。
それはどうしても届かないけれど、閑寂な啜り声が大人の胸に轟いた。
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