5パーセントの内密

結果報告

　あの後俺は久美さんの実家について少々調べてみた。あんな小さな工場があんな大会社の下請けだなんておかしい。それも印刷所だ。今時名刺やパンフレットなんてパソコンとプリンターがあれば誰でも出来る。それをわざわざ小さな印刷所に発注するなんて不思議に思ったからだ。

　しかしそれは全て社長の考えだった。社長は異母弟の事を気にかけていた。同じ父親を持ちながら、自分は何不自由なく生活している。しかしもう1人は母子家庭で辛い生活を送っている。自分に何かできないかと考えた。

　異母弟は母親の実家の印刷工場を継いだと聞いた。そこで社長はその工場に会社の印刷物を発注する事にした。娘が就活していると知り自分の会社へ入れるように手配した。娘が年頃になったので、実力もあり有望な社員である東山との結婚もお膳立てした。

　社長と久美さんの父親とは個人的な付き合いはしていないそうだ。しかし兄は弟を思いやり、弟は誠実に仕事をこなす。そういう関係を続けている。

「素晴らしい社長じゃないか。そんな社長を疑うなんてお前は酷いヤツだ」
「いや、知らなかったし。それにまさか久美のお父さんが社長の異母兄弟だったなんて。びっくりだよ」

　東山は頭を掻きながら調査資料を食い入るように読んでいた。俺は東山から貰った報酬で買ってきたタバコの封を切り火を点けた。新しいタバコは美味い。俺は肺にニコチンを充満させた。