33人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ心配の95%は実際には起こらないというから、ほぼ心配なんてするだけムダだという事だ」
「何だよそれ。ゴンの持論か?」
「違うよ。ペンシルバニア大学での研究結果だ」
「なら信用できるな」
俺の言う事は信用出来ないというのか。失礼なヤツだ。
「まあこれからは仲良くやってくれ」
「今も十分仲いいぞ。毎日お風呂に入れるのは僕の役目だし、オムツだって替えられる。あんな可愛い子を産んでくれて久美には感謝しかないよ」
依頼しに来た時とは正反対な、潑剌とした笑顔で東山は帰って行った。妻の不貞疑惑が晴れた上に、自分は社長から有望視されていると知り上機嫌だった。面白くない俺はタバコに火を点けた。
頭も顔も良くて将来有望。奥さんも美人で献身的。そんな幼馴染みを羨ましいと思う事さえ忌々しい。また「東山の不幸を祈る会」でも復活させようか。そんな気になった。
だが依頼は迅速かつ円満に解決した。全て俺の能力の為せる技だ。改めて自分の優秀さに感心してしまう。それなのに何故客が来ないのだろう。宣伝不足だろうか。そうだ、俺は名刺を作ったんだ。あちこちに名刺を配り営業をしよう。そうしたら客が押し寄せるだろう。
新しいタバコに火を点けた。久しぶりのタバコに酔いながら俺は名探偵だと褒め称えられる自分を想像しほくそ笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!