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「すぐ外した方がいいです。東山に見られる前に」
「そ、そうですね」
お母さんは慌てて写真を外した。
「久美さん、もしかして……」
「小さい頃から団子っ鼻がコンプレックスで、初めてのお給料を貰ってすぐに病院へ行って手術して来たんです……」
何だ、赤ん坊は久美さん似だったのだ。整形してなかったら東山は疑問を抱く事もなかったのだ。
「あの……この事は祐介くんには……」
「勿論内密にしておきます。せっかくの仲良し家族に波風を立てたくありませんからね」
ご両親は安心した顔をして名刺代をタダにすると言い出した。しかしそういうわけにもいかない。東山から貰った報酬はたんまりある。
東山は久美さんに騙されている。それを俺は知っている。その事実だけで俺は満足だ。
「ご馳走さまでした」
「何のお構いもできませんで」
「いえ、とても美味しいお茶でした。ありがとうございました」
俺は愛車スーパーカブに跨った。今日も機嫌の良さそうなエンジン音を轟かせている。さあ名刺を配りに行くぞ。未来の名探偵を乗せられる名誉を喜び歌え。俺は期待に胸を踊らせながらスロットルを開けた。
〈終〉
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