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「何を調べればいいんだ? いや、誰を調べればいいんだ?」
「……妻を」
「何だお前結婚してるのか?」
「子供も産まれた」
俺と同じ年でもう結婚? もう子供? タバコも買えずにシケモクを漁っている俺とは大違いじゃないか。
「そりゃおめでとう。お祝いは……仕方ない。開店祝いと相殺しておいてくれ」
「……それが、おめでとうじゃないんだ」
「ん?」
シケモクは終わるのが早い。いつもの調子で吸っていると唇に火が点く。熱さを感じた俺は潔く揉み消した。
「どういう事だ?」
「息子が俺に似てないんだ」
「奥さんに似てるって事か?」
「いや、妻にも似てない。僕も妻も二重まぶたで鼻筋が通っていてシュッとした顎だ」
要するに美男美女と言いたいのか。
「だけど息子は一重まぶたで団子っ鼻だ」
「まだ赤ちゃんだからぽっちゃりしてるだけなんじゃないのか?」
「いや、僕は赤ちゃんの時からこの顔だ」
まあ、モテてはいた。ファンクラブまであった。そんな東山の不幸を祈る会を密かに結成した事もあった。
「息子は社長に似てるんだ」
「はあ?」
東山の妻である久美は結婚する前は東山の勤める会社の社長秘書だった。そんな久美には社長の愛人だという噂もあった。しかし社長と久美は親子ほど年も離れていたので東山はただの噂だと思っていた。
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