調査開始

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調査開始

 翌日の夕方、俺は愛車のスーパーカブに跨がり東山の会社へ向かった。いや、車が無いわけではない。いや、無い。いや、車だと駐車が面倒だし細い道は通れない。探偵にとってオートバイは機能的なのだ。だから敢えてのオートバイなのだ。 「おいおい、そこに停められちゃ困るよ」  会社の警備員らしき男が慌てて走って来た。 「え? ここ駐車禁止なんですか?」 「そうじゃないけど、玄関横付けは困るよ」 「じゃあどこに停めればいいですか?」 「あっちの駐輪場にでも停めといて」  やはりオートバイは便利だ。  駐輪場にオートバイを停め改めて俺は会社の入口へとやって来た。なかなかデカい会社だ。6階建てで警備員までいる。こんな会社に勤めてるなんて東山も出世したものだ。  社屋からたくさんの男女が押し出されてくる。これだけのデカいビルだ。大勢の人間を飲み込んで消化不良を起こしているようだ。ピシッとしたスーツの男女、ヨレヨレのオッサン。化粧の濃いオバサン……。よし、コイツだ。 「お疲れ様でした」  俺は舞台化粧並に顔を塗りたくっているオバサンに声を掛けた。 「誰?」  オバサンはギロリと俺を睨んだ。相当ストレスが溜まっているようだ。 「(わたくし)興信所の者です」 「興信所?」  胡散臭そうな顔でオバサンは俺を見た。 「実はこちらの会社に勤めている、ある人物について調べております」 「私になんか聞いても分からないわよ」 「え? あなたは受け付けの方ではないんですか?」 「私は秘書よ。だから他の部署とは殆ど関わらないの」 「いや、お綺麗なので受け付け嬢かと思って声を掛けてしまいました。申し訳ありませんでした」  オバサンの表情が緩んだ。
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