33人が本棚に入れています
本棚に追加
調査開始
翌日の夕方、俺は愛車のスーパーカブに跨がり東山の会社へ向かった。いや、車が無いわけではない。いや、無い。いや、車だと駐車が面倒だし細い道は通れない。探偵にとってオートバイは機能的なのだ。だから敢えてのオートバイなのだ。
「おいおい、そこに停められちゃ困るよ」
会社の警備員らしき男が慌てて走って来た。
「え? ここ駐車禁止なんですか?」
「そうじゃないけど、玄関横付けは困るよ」
「じゃあどこに停めればいいですか?」
「あっちの駐輪場にでも停めといて」
やはりオートバイは便利だ。
駐輪場にオートバイを停め改めて俺は会社の入口へとやって来た。なかなかデカい会社だ。6階建てで警備員までいる。こんな会社に勤めてるなんて東山も出世したものだ。
社屋からたくさんの男女が押し出されてくる。これだけのデカいビルだ。大勢の人間を飲み込んで消化不良を起こしているようだ。ピシッとしたスーツの男女、ヨレヨレのオッサン。化粧の濃いオバサン……。よし、コイツだ。
「お疲れ様でした」
俺は舞台化粧並に顔を塗りたくっているオバサンに声を掛けた。
「誰?」
オバサンはギロリと俺を睨んだ。相当ストレスが溜まっているようだ。
「私興信所の者です」
「興信所?」
胡散臭そうな顔でオバサンは俺を見た。
「実はこちらの会社に勤めている、ある人物について調べております」
「私になんか聞いても分からないわよ」
「え? あなたは受け付けの方ではないんですか?」
「私は秘書よ。だから他の部署とは殆ど関わらないの」
「いや、お綺麗なので受け付け嬢かと思って声を掛けてしまいました。申し訳ありませんでした」
オバサンの表情が緩んだ。
最初のコメントを投稿しよう!