調査開始

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「何の用ですか?」 「この家の方ですか?」 「私は家政婦です」  やはり。家政婦は見ているはずだ。この家の全てを。 「そうなんですか? 気品があるのでこの家の方だと思いました」 「そりゃぁ、長く勤めておりますから」  長いんだ。これは尚更好都合。 「ではお嬢様のお小さい頃の事もご存知で」 「子守も仕事でしたから」 「奥様は育児はなさらなかったんですか?」 「良家のお嬢様でしたので得意ではなかっただけです」 「それでも子供としては母親に甘えたかったはずですよね」 「その分旦那様が子煩悩でしたので」 「社長は子煩悩だったんですか」 「それはもう。お仕事でお疲れでも必ずお嬢様と一緒にお風呂に入ったりされていましたよ」 「それで娘さんはファザコンなんですね」 「ファザコンなんて! お父様が大好きで尊敬なさっているだけです」  それをファザコンというはずだが。 「お嬢様の事をお調べですか?」 「ある方がお嬢様との縁談について考えているのです」 「お嬢様は近々結納される予定です。そちらの方には諦めて頂いてください」 「もちろん存じています」 「ならば、まさか……破談にしたいなんてお考えではないですよね? お嬢様はとても良い方です。それにおふたりはとても仲睦まじくて。このまま結婚に進むはずです」 「お嬢様は申し分ありません。しかし結婚となると2人だけの問題じゃありませんよね?」 「お互いの家柄も相応しいし、お嬢様にも問題はない。問題があるとすればお嬢様以外の事ですか?」  俺は黙って肯定も否定もしなかった。そうすれば勝手に何か喋ってくれるはずだ。
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