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「そりゃあ旦那様も若い頃は色々ありましたが、今では立派な社長様です。会社に全精力を注ぎ真面目一徹です。家庭もとても大切にされ、良き夫、良き父親です。きっと父親の姿を見てきたからでしょう」
「父親?」
「旦那様のお父様、先代の社長は奥様の他に女性がいて。奥様も旦那様も寂しい思いをされていたようです」
「それで社長は家庭を大事にされているんですね」
「ええ。とても」
「ならば他に愛人や隠し子なんて」
「絶対にいません。断言できます」
「しかし先代の社長にはいたんですね? 隠し子が」
「……おひとりだけです」
この家以外にも家庭のあった父。その家で過ごすために帰って来ない日もあった。母親の悲しそうな姿を見て、自分は父親みたいにはならないと誓った。
その誓いを頑なに守り家族を大切にし娘に愛情を注いできた社長。そんな社長を尊敬し、共に家庭を支えてきた家政婦。
「なるほど、分かりました。依頼者にはとても素晴らしい家族だと伝えておきます」
「なにとぞ宜しくお願いします」
家政婦は深く頭を下げた。
これで社長の疑惑は全て晴れた。愛人もいない、隠し子もいない。清廉潔白だ。
しかしそれと共に新たな可能性が現れた。先代の隠し子だ。その隠し子が久美さんと関わりがあったら赤ん坊が社長に似ている理由になり得る。
俺は確認のためにと隠し子の居場所を家政婦に聞いた。そしてその場所へとカブを走らせた。
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