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失意の悪役令嬢
「ふっふっふ、おめでとうございます! お嬢さまはヴァルナー様にフラれることで、破滅フラグを回避しました!」
「は、はあ?」
突然の一言に、リアンノ・ミミ・クラーセンは言葉を失った。
相手は、今まで妙に寡黙だった執事で、リアンノにとっては空気のような存在だ。
そんな男が、突然笑いながら意味の分からないことを言ってきたのだから、リアンノは当然ながらパニックになった。クラーセン家の一人娘として十五年間とにかく甘やかされて育ってきたリアンノは、予期せぬ出来事がとにかく苦手なのだ。
(な、なにを言っているの、この執事……。意味がわからないわ……)
リアンノは分かりやすくドン引きしている。
当の執事は、リアンノの冷たい視線を一身に浴びて満足そうにため息をついた。
「ああ、いいですね、その冷たい視線。たまりません!」
「気持ち悪ッ」
即答。
コンマ二秒で発せられたリアンノの罵倒に、執事は笑みを深めた。全くダメージを受けている様子がない。それどころか、ますます喜んでいるようだ。
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