おしまいのお話

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 恋人になってからずいぶん経つが、カイネにこうやって前触れなく甘えられると驚いてしまう。恋人としては当たり前の行為なのだろうが、未だに慣れそうもない。 「か、カイネ、不意打ちは卑怯だわ……」 「っふ、……本当にいつまでたっても慣れませんね」 「あっ、笑ったわね!? 私の反応が面白いからって、わざとやってるでしょ!」 「そんなことはありませんよ。しかし、明日私たちは結婚するのですから、いい加減慣れていただかないと」 「ううん、それはそうなんだけど……」    メイドたちの話によれば、結婚した男女は、やがて友人のような関係になるという。抱きしめあっても、何も感じなくなるのだとか。しかし、リアンノにいたってはそのレベルまで行き着いていないようだった。  カイネに抱きしめられるたびにリアンノは指の先まで真っ赤になってしまうし、何気ない仕草を見てはときめきっぱなし。おかげさまで倦怠期というものをリアンノはまだ経験したことがない。  しばらく迷った末、ぎこちなく背中に手を回すリアンノの耳元で、カイネは低く笑った。 「お嬢さまの耳……」 「えっ?」 「ずいぶん赤くなっていますね」
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