本編

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おっと、歩きながらだいぶ長いこと 回想していたようだ。 いつの間にか家から最寄りの駅に到着していた。 今日も満員電車に一歩踏み出すと "君"がいないか目線をさまよわせる。 これが今年で30になる俺の毎朝の日課であり、 楽しみだった。 「「いた」」 見つけると俺は"君"がよく見える場所に移動する。 この満員電車のなか動くのは なかなか大変だが仕方がない。 「すみません、すみません」と何度も謝り、 頭を下げながら人をかき分けて進んだ。 ついに"その場所"にたどり着くと、 思わず口もとが緩んだ。 最高の気分だった。 毎朝のこととはいえ、あまりの高揚感に もう俺には何の音も聞こえていなかった。
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