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時間は止まってくれない。世界も人の心もすべてが絶えずアップデートされて、何か消したいことが生まれたとしても「元に戻す」のコマンドは使えない。覆水盆に返らず。時代が巡り巡っても、その諺の表す意味は不変であるといえる。
相手の気持ちをずっと自分に向けたままでいられたらいい。誰だってそう思うのは当然のことだけれど、相手は自律して考え、行動する同じ人間。いつだってあたしが思うように動いてくれるわけではない。それを分かってはいても、なんとかして言うことを聞かせたかった。
でも結局、繋ぎ止めるどころか、すべて失くしてしまった。
震える指が空を切る。そこにはボタンなどあるはずもなく。
寒さ厳しい、師走のクリスマスイブ、早朝。
「実は、他に好きな人ができた」
あたしは彼に振られた。
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