あの日の出会いを、僕はまだ覚えている

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◇ 水泳部は土曜日も練習があったりする。強豪校ではないけれど、大会が近いため普段より多めに練習をしているのだ。 タイムを測定中、「うわぁ!」という悲鳴に振り向いた。プールサイドで男子三人がかたまっている。先ほどからふざけていたため、そろそろ注意しなければと思っていた矢先の出来事だった。 「何してるの!」 「せ、先生ぇ~」 どうやらふざけてじゃれ合っていたら一人が足を滑らせてぐきっと捻ってしまったらしい。平日ならばまずは保健室、といいたいところだけど、今日は休日。 水泳部はもう一人顧問がいるためその佐藤先生にお任せして、私は怪我をした彼を連れて休日診療へ駆け込んだ。 受付で必要事項を記入してからトリアージを受けレントゲン室へ向かい診察を待つ。 「神田先生ぇ……ごめんなさい」 中学一年の牧田くんはしょぼんと項垂れた。前々からお調子者ではあったけど、病院送りは初めてのこと。今回のことでどうやらずいぶんと反省しているみたいだ。 いや、本当に反省してほしい。これから私は親御さんに連絡と学校に報告と……って大変なことが待ち受けてるんだからね。 ……と牧田くんに言えるわけもなく。 顧問として生徒に怪我をさせてしまったことも反省だし。ため息をつきたい気持ちに、ダメダメと顔を上げた。 診察室前に貼られているプレートには今日の担当医師が書かれている。ぼんやりとそれを眺めると、ドキリと心臓が音を立てた。 【本日の医師は天早(あまはや)先生です】 忘れている何かが頭の片隅で揺れる。 その名前には覚えがある。 いや、そんなはずはない。天早って苗字、私にとっては珍しく感じるけど、でもきっと全国にたくさんいるだろうし、本人なわけないでしょ。 と思いつつ、鼓動は速さを増していった。 何かを期待しているのかもしれない。
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