あの日の出会いを、僕はまだ覚えている

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「牧田くん、杉浦くん、プールサイドでは騒ぎません。あ、こら、待ちなさいっ!」 先日ふざけて怪我をしたくせに懲りない生徒たちに今度こそ怪我をさせないようにと早めに注意をしたのだが――。 「きゃっ!」 あろうことか足下がすべって体がぐるりんと回った。脳天に響くゴンという鈍い音。 「神田先生っ!」 私を呼ぶ声が聞こえる。 けれど頭はぐわんぐわんしてなんだかよくわからない。心ここにあらずといった感じで意識が朦朧とした。 「……痛い」 「あっ、先生起き上がらないでっ」 「へっ?」 「頭から血が出ているので救急車呼びますので」 「きゅ、救急車?」 よくわからないけれどなすがまま、私は痛みに耐えるため目を閉じた。 なんだなんだ、何が起きたんだ? 頭を打った動揺か、自分が今どうなっているのかさっぱりわからない。痛みで何も考えられない。 遠くから救急車のサイレンの音が聞こえた気がした。
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