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ゆっくりと身体を起こし、上半身がはっきり見える大きさのある鏡へ視線を向けてみた。
その鏡を見た途端に息が止まりそうになった。
小さい頃から夢に出てきた、あの少女。
銀色の髪がふわふわと揺れるような柔らかさで、それが腰まで伸びている。
肌の色が雪みたいに白くて、二重瞼に目がぱっちりとした大きさ。
鼻筋も綺麗に整っていて、触りたくなりそうなピンク色の唇。
まるで、生きたお人形さんが鏡に映っている。
………………なんで?
思考寸前になりそうになりつつも、確認の為に何回か頬を抓ってみる。
「痛っ。」
夢じゃない。
なんで、あたしがあの少女になっているの?
あの男が何かした?
いつも反抗的な事ばかりするから何かしたに違いない。
「この腹黒男!いったいどういうつもり?」
あたししかいないせいか声を張り上げて、あの男を呼ぶ。
しかし、返事は返ってこない。
無視ですか。
本当に何を考えているのかわからない男。
コンコンと、部屋の扉が叩かれた音に気づいたあたしは、再び眠るようにする。
カチャリと開き、先程の女性がワゴンのような形をした台をを引っ張りながら、あたしの方へ歩いてくる。
飲み物はやはり、真っ赤の色をした液体が入ったものと、見たことの無い食材だった。
真っ赤の液体は゛血゛だとあたしでもわかる。
しかし、それ以外は首を傾けてしまう。
これは、いったいなに?
「どうなされました?体調が回復するには、まずは栄養をつける事からです。」
戸惑うあたしを見た女性は、少しだけ訝しそうに見る。
「リーフレットお嬢様が目覚めない間、婚約者が毎日訪ねて来ていたんです。羨ましいです、本当に愛されているんですね。」
にこにこと笑顔になる女性とは対称的に、あたしの頭は一気に固まってしまった。
…………………コンヤクシャ?
ワゴンのような形をした台の周りには、いろんな花束が沢山飾られている。
目を引くような派手な花束に、顔が引き攣るのをどうにか耐えてみた。
コンヤクシャって何?
何が起きているのかあたしには理解が出来ない。
それに。
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