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「やっと目覚めたので、今はゆっくりと過ごされてくださいませ。お母様がとても心配をなされていました。」
ま、あの方は相変わらずですが。
完全に状況が読み込めないあたしを見て、女性は悲しそうに顔を曇らせた。
「まだ慣れない内に、あんな事をさせるのが無理なんです。アンドレラ国王様も何を考えていらっしゃるんでしょうか。」
ボソっと溜息を吐きながら呟く女性の言葉に、余計にあたしは混乱してしまう。
アンドレラ国王様って、確か、あの男の上の人じゃなかった?
お偉いさんだったはずよね。
お母様とか話していたけど、いったいどうなっているの。
あたしは水無月結衣。
リーフレットお嬢様じゃないのに。
でも、今の状況はどう考えても夢じゃない。
あの鏡を見たあたしは、夢の中に現れた少女。
何が起きているのか、人間のあたしには理解が出来ない。
それに、あたしのいる部屋とは雲泥の差だ。
高い天井に心地よい音楽。
心を落ち着かせる匂いが鼻を掠めていくし、何しろ。
あたしが眠っているベッドの肌触りがシルク??と思わせるような質がいい。
うん、これは夢じゃない、絶対に。
いったい、何が起きているのか全然把握が出来ない。
あの男は相変わらず無視だし。
第一婚約者って何?
あたし、まだ十六歳なのよ!!
「お食事のご用意が出来ました。起きられますか?」
柔らかい声に気づいたあたしは我に変わる。
あたしに微笑む女性は綺麗で、まるでおとぎ話の世界に出てくるような雰囲気を醸し出している。
この女性も銀色の髪をしていて、ショートヘアーだけども本当に綺麗。
女性が身に着ている洋服を何気なく見てみると、あたしが知っている洋服とは全然違う。
白いワンピースに裾がフリルをふんだんに使っていて、首元にはピンク色をした布で可愛く結ばれている。
所作が見惚れるほど優雅で、思わずあたしは見入ってしまった。
「リーフレットお嬢様?」
見入っているあたしに気づいたのが女性は戸惑っている。
はっ。
あたしは、今、リーフレットなのよね。
わからないけど。
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