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「あの。」
遠慮がちなあたしに気づいたのか綺麗な女性は首を傾ける。
「どうしました?やはり体調が思わしくないのでしょうか。」
「いえ、そうではなくて。実は記憶が無いみたいで。」
嘘ですが。
だってそうでも話さないと信じて貰えそうにないもの。
あたしの発言を聞いた女性は顔を歪めた。
「そうでしたか。何か聞きたい事はありますか?何でも大丈夫ですよ。」
不安を取り除く為だろうか、優しく微笑んできた。
「ここは何処?あ、、、私の名前は?」
あたしの発言を聞いた女性は目を丸くさせる。
「なんてこと。この事は絶対にアンドレラ国王様に知られてはいけないわ。」
両手で顔を覆っている。
えーと、演技をしてもいいんだけど、そもそも、この少女の性格や話し言葉、今まで通りの接し方なんて知らないもの。
リーフレットとしか知らない。
女性は、あたしの話を聞いて何やら考えているの。
そして重たい口を開いた。
「今、眠っている方は、リーフレット、アンドレラ。アンドレラ国王の第一お子様になられます。つまり、お妃様に値する重要な立場になります。」
「……………え?」
「ここは、所謂吸血界。この世界は六っつの世界で交流がなされています。その中でも一番重要視されているのが吸血界でございます。その血を絶やさない為にも跡継ぎは必要で、リーフレット様には小さい頃から婚約者が決定されています。」
「それって政略結婚って事?」
あたしの発言に女性の肩がピクリと動く。
「リーフレットお嬢様。それはアンドレラ国王様が決めた事なのです。そして、それは絶対に覆る言葉不可能でございます。」
「絶対的。」
ボソっと呟いたあたしの言葉を聞いた女性は黙ってしまった。
小さい頃から夢に出てきた貴方は、どうして泣いていたの?
親から決められたから?
もしかして。
思い当たる事はあったけど、あえて蓋をした。
「ありがとうございます。えっと名前をなんて呼べばいいのでしょうか。」
「私でございますか?」
「はい。」
目をきらきらさせてみるあたしに女性は苦笑いをした。
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