つげる

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人に(なら)い、互いの唇を寄せ合う中でフィロメトラは、人類の作りだした平たい電子機器を横目に眺め、もう伝えるべき相手も居ない考えを胸中に浮かべる。 ……人よ。 この美しい螺旋を描き、宇宙のただ中に浮かぶ銀河の端に育まれた命よ。 知らなかったでしょう、自分等が都合よく存在できる場所で、飼育されていたとは。 解き明かそうとして、解き明かせなかった問題の答えを。 ほんの少し、答えに迫る事はできていましたが。 生命の種子が宇宙より飛来したとする説。それは半分正しいのです。 我等が、君等の起源たる命をこの天の川銀河に植え付けたのですから。 成熟すれば精神のみで永遠に生きる我等は、繁殖期にのみ必要な器を得る為、長い時を経て育まれる生命を作りだしばら蒔いたのです。あまねく宇宙(そら)に。 自ら増殖し、その身体の作りを書き換え、やがて己の設計図を知り、欠陥のない様に調整して行く命として。 何よりも繁栄しながら、他の種の絶滅に小さな精神を痛めた飼育生命(じんるい)よ。 もう心配しなくても良いのです。 君等の脆弱な精神は、苦しみも感じぬ内に全てが一瞬に屠殺されましたから。 己の肉体が、我等の繁殖の器として育まれていた事実に歓喜しなさい。

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